【Vol307】ヤクルトから学ぶ"海外進出の難しさ”とは

メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、

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┃「グローバルリーダーへの道」
┃2018/03/29 号
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今号のメルマガは、ヤクルトがフィリピンに土着化した話です。
日本企業のグローバル進出がどれだけ難しいことなのか、皆さんも
ニュースや書籍で読んだことのある方もいらっしゃるかもしれません。
自分たちの商品を現地で売る「現地化」だけでは対応できないことが
あるのだと、書籍『新しいグローバルビジネスの教科書』(PHP新書)
では指摘しています。

日本人がフィリピンに行って「現地化」するというと、フィリピンで
英語を話し、フィリピン人と同じような振る舞いを想起するかもしれ
ません。しかし、土着化はさらに深くのめり込んで「フィリピン人に
なりきる」ことにほかなりません。現地の人と生活を共にし、現地の
人たちの表面的な活動だけではなく、価値観を学び、自分の生活すら
も再構築することが必要になってきます。

◆進出当初、集金に失敗し、フィリピン市場から撤退寸前に
追い込まれたヤクルト

日本と同じビジネスモデルを1970年代にフィリピンに持ち込んだ
ヤクルトは、フィリピンでの累積赤字が拡大してフィリピンで事業を
継続するのが困難になっていました。販売員、つまりヤクルトレディが
回収した代金を私的に流用してしまうなど、なんと「集金」という
初歩的な段階から失敗していました。単純な問題のように見えますが、
ヤクルトには当時、ローカルの現実と向き合うためのノウハウを持って
いませんでした。日本だと社員が職に困らず、毎月決まった日に一定額
の給与が入ってきて当たり前なので、回収した代金を自分のポケットに
入れてしまうことは考えにくいかもしれません。当時のフィリピンに
おいて、金銭感覚やルールを叩き込まれていない人たちは、仕事と生活の
財布を分ける習慣がありませんでした。日銭で生活しているフィリピンの
人たちの状況が想像できなかったのです。

実は、日本本社がフィリピンからの撤退を決断しようとしたとき、後に
同社の専務になる若かりし平野博勝氏が初めて海を渡り、フィリピン
法人に乗り込みました。そしてあっという間にその厳しい現状を立て
直した経緯があります。事業を立て直したポイントはビジネスの土着化
でした。

平野氏がヤクルトのビジネスを土着化する方法は例えば以下のような
ものでした。まず、一日分の商品を販売員に渡し、その都度、代金を
回収させて銀行に入金させ、入力したという証拠を持ってきた販売員に
だけ、翌日の商品を渡します。買った人から確実に集金し、集金した
お金を直ちに銀行に入金させることで、フィリピンでは当たり前だった
代金未回収が劇的に解消したといいます。

お金を貯める習慣のないフィリピンの販売員は、給与を渡すとすぐに
全部使ってしまいます。家に持ち帰った瞬間に旦那さんが働かなくなり
ます。しかし、フィリピンではそれは特別なことではないのだと言います。
そこで、平野氏はお金を貯めさせる仕組みを考えました。給与は現金で
渡すのではなく、販売員名義の銀行預金通帳に振り込むことにしたのです。

◆現地の人たちと同じものを飲んで、歌って、踊って、食べて土着化

売る方法だけを考えていても、永久に商売はできません。自ら、
ビジネスの外へ出て、現地コミュニティの中に入り込んでいくことで、
現地の人に共感を覚え、どのようなビジネスの仕組みを作っていける
かということを一所懸命に考えたのが平野氏でした。

意外にもフィリピンへ立て直しに派遣されたのは、本社で“はみ出し者”
と呼ばれていた人たちで、“国際派エリート”ではありませんでした。
当時のヤクルトのフィリピン法人は赤字だったので、現地の人と同じ
ような場所に住み、現地の人たちと寝食を共にするなどしました。

現地の従業員に「こんなやり方ではダメだ」と指摘すると、当然、不平
不満を並び立てて来ます。現地の従業員を説き伏せなければいけませんが、
そのときも「上から目線」では通用しません。いくら正論を述べた
ところで、人は動きません。相手の立場に立ち、相手の顔を立て、本人
たちをやる気にさせなければなりません。そのためにも相手の懐に飛び
込むべきだと、平野氏は指摘します。

平野氏が言うグローバル化の重要性は以下のようなものです。
(1)飲みニュケーションはコミュニケーション
フィリピンでのビジネスパートナーである華人は、いわゆる「闘酒」を
挑んでくる。
(2)現地人が食べる食べ物を何でも「うまい、うまい」とよく食べる
現地社員と現地の食べ物でヤシ酒を飲んだ、
(3)教養も武器になる
シンガポールでは英国人ビジネスパートナーと文学や歴史談義をした。

歌が歌える、酒が飲める、踊れるといった素養は、ビジネスとは
まったく関係のない分野です。しかしながら、言葉を使わないで
お互いの信頼性、相手に対する敬意、ビジネスを「一緒にやりたい」と
思わせる行動こそが最終的には重要です。

平野氏は、本格的な英語教育をまったく受けていないと言います。
しかも、フィリピンでも英語が通じない、タガログ語(フィリピンの
言語)の世界に飛び込みました。ほとんど言葉はわかりませんが、
必死で商売をしようとすると最低限のことは覚えると言います。
商品を売ろうということよりも現地の人と一緒に仕事し、自分たちの
ビジネスを土着化したいという考えさえあれば、言葉はあとから
ついてくるのだと言います。

ビジネススキームさえ成り立てば、相手もお金になるから興味を示す
はずです。いくら口が達者でも、“筋の悪いビジネス”には誰も寄り
付いてきません。立場を逆転して考えてみて、相手の立場になって
みればわかることですね。グローバル化の本質は、上記のような
泥臭い部分にあるのではないかというのが同書の著者の見方です。

いかがでしたでしょうか。
直接、商取引と関係ない対象との間でも、飲んで、歌って、踊って、
食べる――交流はつきものですね。皆さんが海外へ飛び込んだ時、
日本人であることを忘れ、現地の人になりきって、本当の意味で
現地に根付いたビジネスを行うのは好きですか。もしかするとそこが、
本当の意味でのグローバルビジネススキルが試される分岐点になるの
かもしれません。

◆ソース◆
=================================
『新しいグローバルビジネスの教科書』(PHP新書)
https://www.amazon.co.jp/dp/4569824994/
pp.127-135
=================================

【Vol306】グローバル流“アポの取り方”とは?

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┃「グローバルリーダーへの道」
┃2018/03/22 号
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今号のメルマガは、ミーティングを設定する際のアポイント
(以下、アポ)には「柔軟に対応するのがグローバル流」という話です。
時間感覚というのは外国人と日本人とでギャップがあるという話は
以前にもメルマガで書きましたが(文末の◆ソース◆参照)、今回は
それが著しく現れている例の一つです。

書籍『これからのビジネスリーダーに贈る45の視点』(同文館出版)
から紹介します。著者の安田信氏が、PICA(アジア民間投資会社)と
いう日・米・欧州・豪・加の企業243社の共同事業に約20年勤務した
経験やその後も約20年、国際社会で仕事をしてきた経験から執筆した
書籍です。


◆急なアポ設定・変更が難しいのは日本独特のビジネス慣行?

日本の場合、アポを取る時は随分前からお願いしないと失礼だという
暗黙の了解があり、アポの時間を変えることはもっと失礼なことと
されています。企業経営のトップなど、重要なポジションにいる人に
アポを取ろうとする場合、何週間も前から、場合によっては1、2ヶ月も
前からお願いするのが普通でしょう。企業経営のトップは多忙ですから、
予定が詰まっているのは事実で、仮に「今週お会いできないでしょうか」
などとアポを取ろうとしても「そんな直前に言ってくるなんて失礼な」
と悪い印象を相手に与えてしまうだけです。

ましてや、いったん決まったアポの日時を変更してもらおうなどと
しようものなら、「失礼千万なヤツ」だと面会する前から嫌われて
しまいます。それが日本のビジネス社会での慣行でしょう。

本当に“分刻み”に忙しい場合は仕方ありませんが、「アポ設定が
容易でない人」という雰囲気を演出しているケースもあると安田氏は
指摘しています。どういうことかと言うと「あなたの都合に合わせ
ますよ」などと時間に柔軟に協力することによって、“重要でない
人物”と思われるのが嫌だという心理が働いているのかもしれないし、
あるいは秘書が、「忙しくてアポ設定は容易でない」という雰囲気を
ボスのために忖度して作り出しているというわけです。

安田氏はPICA勤務時代、海外の要人のために、日本の要人とのミー
ティングのアポ設定を長年やってきたと言います。両者の板挟みに
なって困ったことが年柄年中あったと振り返ります。海外の要人に
向かっては「アポは早めに入れて欲しい」「決まったアポの日時は
変更しないで欲しい」と何度も力説するのですが、なかなかそうは
いきません。海外の要人にはまったく悪気はないのだけれど、日本の
ビジネス社会での慣行通りにうまくいかない結果、日本側からは叱られ
たり、大変な文句を言われたことが度々だったと振り返ります。


◆柔軟に相手の都合に合わせてアポ設定・変更するのがグローバル流

安田氏の意見はこうです。世界市場や取引の状況は日々刻々と変わるし、
スケジュールも当然変更が発生します。それに対応する柔軟さや
スピードも必要です。そうした国際ビジネスの状況で生きていくため
(特にアジア地域内では“仲間意識”もあり)、時間やアポはお互い
あまりフォーマルならずに、柔軟に相手の都合に合わせていこうと
いう姿勢で協力しあっていると言います。

そのため、東南アジアや香港などのビジネスマンから見ると、相当
前からの依頼でないとアポが取れない、また、いったん決まった
アポの日時を変更するなどということは「ありえない」とする
日本の“アポ文化”は硬直した社会に映るのだと言います。

ニューヨークや香港、ロンドンなどの相当な要人たちも、直前の
アポの依頼を気にせず、可能なら、短くてもミーティングを受け
入れているということです。電話会議やテレビ会議に至っては
もっと柔軟で、いつ何時飛び込んでくるかもわかりません。時差の
ためにそれが深夜になることも珍しいことではありません。

「日本の決断は遅い。しかし、アジアや欧米の決断が早い」と
言われる原因の一つにアポに対する柔軟性の違いがあるかもしれない
と安田氏は指摘します。海外から数日前にもかかわらずアポを取りに
来たとか、日時を変更してくれと依頼が来たからといって、「自分を
見下している」などと腹を立ててはいけません。彼らに悪気はなく、
それが「普通」だと考えています。何とか15分でもやり繰りして
時間を作ればそのほうが感謝されるし、人間関係も築くことが
できます。アポの時間を作る努力をしないことによって、ビジネス
チャンスや人間関係が失われる損失のほうが、よほどマイナス面が
大きいと安田氏は指摘します。

いかがでしたでしょうか。
ビジネスの会合、面談、打ち合わせのため「何時に相手を訪問し、
どれだけの時間をもらえるか」というのは、なるべくアポで前もって
決めておいてその予定通りに厳格なほうがきっちりしていて良いだろう
という頭がメルマガ著者にはありました。しかし、安田氏によると
グローバルビジネスでは、時間については意外にも(?)自由度が
大きいほうがお互いに柔軟に対応しているということの表れで良い
のだそうです。みなさんのアポの自由度に対する感覚は厳格で
しょうか、それとも柔軟でしょうか。そしてそれは、対日本人と
外国人とで上手く使い分けることができていますか?改めて振り
返ってみると、意外な気付きがあるかもしれませんね。


◆ソース◆
=================================
『これからのビジネスリーダーに贈る45の視点』(同文館出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/4495523813/
pp.88-91
【Vol.202】外国人の“時間感覚のズレ”は直るのか?
http://pegl.ldblog.jp/archives/46849048.html
【Vol.275】日本の時間感覚 VS 米国の時間感覚
http://pegl.ldblog.jp/archives/50531491.html
=================================

【Vol305】「シンプルな英語」を作る4つのテクニック

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┃「グローバルリーダーへの道」
┃2018/03/15 号
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今号のメルマガは、ノン・ネイティブが「シンプルな英語で
メッセージを伝える方法」についてです。英語コミュニケーションを
身につける勉強を皆さんは日々積み重ねているわけですが、
「なぜ必要なのか?」という本来の目的を改めて考えたことがあるで
しょうか。英語は「メッセージを伝える」ためにあります。
「カッコよく話したい」「恥をかきたくない」以上に「メッセージが
伝わる」ことが大切なのだと『世界で活躍する日本人エリートの
シンプル英語勉強法』(ダイヤモンド社)は述べています。

「メッセージを伝える」ためには、英語力以前に大切なことが以下の
ように4項目あると同書は言います。

1.大きな声で話す。
下手な英語でも聴こえなければ伝わりません。日本語のアクセントは
残っていても、聴こえるように堂々と自信を持って大きな声で話します。

2.「結論」と「根拠」を明示する。
伝えるべきメッセージの「結論」を明確にし、「結論」から述べる
ことが大切です。次に結論を支える根拠を明示します。結論と根拠の
流れがしっかりしている構成であれば、論理的なコミュニケーションが
できます。

3.論理構成が明確でストレート。
聴いていてスっと納得できる、シンプルだけれど説得力のある結論と
根拠を組み合わせると聴き手が理解しやすくなります。結論と根拠の
関係は、図示するとピラミッドの形をしており、頂上に結論が描かれ、
その結論を3つの根拠が支える「ピラミッド・ストラクチャー」と
言います。私たちが英語で意見を述べるときには、ピラミッド・
ストラクチャーで結論と根拠を組み立てることが大切です。また、
情報を伝えるときは、冒頭で要旨を伝えた後、詳細を述べます。

4.簡単な言葉を使う。
なるべく簡単な言葉を使います。こちらの発音に日本語アクセントが
残っていても、聴き手に聞き間違われるリスクが減ります。自分の
よく知っている単語を、自信をみなぎらせて使うようにしないと、
発言の説得力が薄れてしまいます。

◆具体例:スティーブ・ジョブズ氏のスピーチ
「シンプルに伝える英語」とは具体的にどのようなものでしょうか。
同書の中では一例として、スティーブ・ジョブズ氏によるスタン
フォード大学卒業式でのスピーチを著者は取り上げています(文末の
◆ソース◆に示したURL参照)。約15分のスピーチは、以下で示す
ようなシンプルなメッセージ、論理、表現で構成しています。

Today I want to tell you three stories from my life. That's it. 
No big deal. Just three stories.
(今日は、私の人生から3つの話をしたいと思います。ただそれだけです。
大げさなことではありません。わずか3つの話をするだけです)

The first story is about connecting the dots.
(最初の話は、点のつながりについてです)
(中略)

My second story is about love and loss.
(2つ目の話は、愛と喪失についてです)
(中略)

My third story is about death.
(3つ目の話は、死についてです)

まず、ジョブズ氏はスピーチの冒頭で、「(ジョブズ氏が得た)人生の
学びを3つ伝えることが本日の話の目的である」旨を聴衆(卒業生)に
向かって伝えます。明確な結論あるいは要旨を手短に伝えることが
大切です。わずか11のシンプルな英単語で表現しています。

本来なら、どのような「3つの学び」なのかを冒頭で伝えることが
結論の明確さを生み出しますが、ここではあえて、聴衆を話に引き込む
ために具体的な内容を伝えていないのだと同書の著者は述べます。
それでも、「本日の目的は、人生の学びを伝えることだ」という言葉から
始まることで、「ジョブズが人生から学んだことって何だろう?」と
いう聴衆の期待と問題意識が高まります。

同時に、スピーチが3部構成であることを伝えています。そして、
その後に続くスピーチの中で、論理構成を聴衆が理解するための助け
として、3部の冒頭に、「first(第1に)」「second(第2に)」
「third(第3に)」と目印になる言葉を加えています。これにより、
論理構成が一層わかりやすくなっています。

そこで使われている英単語は「connecting dots(点のつながり)」
「love and loss(愛と喪失)」「death(死)」という簡単なものです。

ジョブズのスピーチの特徴は、
1.結論が明確
2.論理構成がストレート
3.簡単な言葉を使っている
――ということです。

卒業式という晴れの場で、15分のスピーチを聴く側は、落ち着きを
なくしてじっとしていられないものです。だからこそ「シンプルに
伝える英語」が徹底されているとも言えるのでしょう。そして、
これらが、私たちノン・ネイティブスピーカーの目指すべきゴールだと
同書では述べています。

いかがでしたでしょうか。
同書を読んでメルマガ筆者がふと頭を横切ったのはトランプ米大統領
の英語です。「1. 結論が明確」と「3. 簡単な言葉を使っている」は
見事にあてはまっています。「2. 論理構成」は乱暴なところが
ありますが、「シンプルな英語でメッセージを伝える」方法には
違いないと納得した次第です。

みなさんは、「シンプルな英語でメッセージを伝える」ということに
心を配っていますか。どのようにシンプルな英語でメッセージを
伝えていますか。


◆ソース◆
=================================
『世界で活躍する日本人エリートのシンプル英語勉強法』
(ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/B079LV136Z/
pp.186-191

スティーブ・ジョブズ氏によるスタンフォード
大学卒業式でのスピーチ(Youtube)
https://www.youtube.com/watch?v=VyzqHFdzBKg
=================================

【Vol304】催促したいときに使う“品格のある英語”とは?

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┃2018/03/08 号
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今号のメルマガは、行動や返事を催促したいときの表現や、相手が
忘れてしまわないようにリマインド(思い出させるための注意)したい
ときの表現についてです。書籍『品格のある英語は武器になる』
(宝島社)から紹介します。さっそく、避けたほうが良い《NG表現》を
最初に、その後、それに対する丁寧で品のあるプロフェッショナルな
英語の使い方を紹介する順番でみていきましょう。

(1)行動や返事を催促したいときの英語表現
《NG表現》
Do this ASAP.
(Do this as soon as possible.)
「早くしてください」
Please reply as soon as possible.
「なるべく早く返事をください」

Do this ASAP.だと直接的すぎて《NG表現》であることは理解できる
ような気がします。“Please…”を使えば、丁寧に催促している
印象がありますが、同書では《NG表現》としています。特に、すべての
お願いごとをワンパターンで“Please…”という言い回しで言って
しまうと、形式的で一方的に聞こえるのだと同書では述べています。

Could you let us know as soon as possible?
「できるだけ早くお知らせいただけますか?」
上の表現は簡潔で良さそうな気がしますが、もうひと押し「申し訳
ないですが」という気持ちを伝える言葉が加わると、より良いのだと
同書では述べています。そこで効果的なのが下で説明する
“クッション言葉”です。

急いで欲しい(緊急度の高い)お願いをするときや、相手の負担になると
分かっていながら依頼しなければならないときは、“クッション言葉”
というものを使って表現をやわらげます。

《相手を気遣う「催促」の仕方》
We would appreciate your reply at your earliest convenience.
「できるだけ早くお返事をいただけるとありがたいです」

「依頼に応えていただけると助かる」というニュアンスを出したい
とき、“クッション言葉”になる言い回しが、以下です。
I (We) would appreciate…
「~していただけるとありがたいです」

ほかの例文も見てみましょう。

[例文1]We would appreciate your feed back on this product.
「この商品に対するフィードバックをいただけるとありがたいです」

[例文2]I would appreciate your prompt response.
「すぐに返事をいただけますと幸いです」

いつもワンパターンでI (We) would appreciate…ばかりを使いたくない
場合は、以下のような似た表現があります。
I (We) would appreciate…は便利なクッション言葉なのですが、
いつも同じではなく、以下の表現もときどきは交えて使うと良さそうですね。

Would you please get back to us at your earliest convenience?
「できるだけ早くお返事をいただけますか」

I'm sorry to rush you, but would you please get back to me at 
your earliest convenience.
「急がせてしまって申し訳ないのですが、なるべく早く返事を
いただけますでしょうか」


(2)リマインドしたいときの英語表現
《NG表現》
Can you reply ASAP?
「すぐに返事をもらえませんが?」
I didn’t get your reply yet. Please respond ASAP.
「まだ返事をもらっていません。早く送ってください」

上の2番目の表現は“Please”と言いながらも、かなり直接的な表現
なので同書によると《NG表現》です。

What is the status on…
「~の状況・進捗はどうですか」

上記も直接的すぎて相手にプレッシャーを与えます。

リマインダー(思い出してもらうための注意)のメールを送るときも、
タイミングや伝え方などに大変気を遣います。相手にプレッシャーを
かけずに催促するには以下の表現が便利です。

《仕事を円滑に進めるリマインドの仕方》
I'd just like to follow up on this request.
「私がお願いした件の進捗状況を確認させていただきたく思っております」
If you require further information, please let me know.
「もしさらに情報が必要でしたら、お知らせください」

I'd just like to follow up on this request.は、返事をくれない
相手を責めるのではなく、「自分が確認したい」という表現で、
やんわりと返事や行動を促すことができる便利なフレーズです。また、

I'm sorry if I missed something in the interim.
「もしこちらが前回の連絡からの間に見落としがありましたら
申し訳ありません」
と付け加えると、返事をもらった可能性はあるが、確かではない
ことが伝わります。

I'd just like to follow up on… 
「~の件について確認させてください」「状況を確認させて
いただきたいのですが」
を使ったほかの例文も見てみましょう。

[例文1]I'd just like to follow up on my email dated November.2nd.
「11月2日にお送りしたメールについて、確認させていただきたいと思います」

[例文2]I'd just like to follow up regarding your 
budget plan for the period of Apr.1-Aug.31.
「4月1日~8月31日までの予算計画について確認させていただきたいです」

また、以下の表現もよく目にします。
Please feel free to let us know if you have any questions.
「何かご不明な点などありましたら、お気軽にお聞かせください」
このような趣旨の文を加えると、なお丁寧になります。

いかがでしたでしょうか。
英語は直接的なイメージがありますが、そのイメージとは裏腹に、
実際はかなりオブラートに包んだデリケート言い方がたくさんあります。
みなさんは、行動や返事を催促したいときやリマインドしたいとき、
どのような英語で表現していましたか?


◆ソース◆
================================
『品格のある英語は武器になる』(宝島社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4800278546/
pp.36-39 
================================

【Vol303】Mrs.はなぜ「ミィスィス」と発音するのか

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今号のメルマガは、姓の前につける英語Mrs.はなぜ「ミィスィス」
と発音するのか――など、英語にまつわる素朴な疑問とその答えを
『英語の謎 歴史でわかるコトバの疑問』(角川ソフィア文庫)から
二つ紹介します。

(1)素朴な疑問その1:Mrs.はなぜ「ミィスィス」と発音するのか?
Mr.は「ミスター」と発音します。しかしながらMrs.は「ミスターズ」
とは発音せずに[misiz][misis]と発音しますよね。英語の授業で
初めてMrs.を習ったときに「Mrs.をどのような理屈で[misiz]
[misis]と発音するのか?」と不思議に思ったことはありません
でしたでしょうか。
その疑問を解くためには、Mrs.の語源に遡る必要があります。

Mrs.は、既婚女性の姓の前につくことからわかるように、「女主人」
「主婦」を意味するmistressが語源でその省略形です。それならば、
Mrs.を「ミストレス」と発音すればいいだけの話に思えますが、
そうは発音しないところが不思議なところです。

同書によるとmistressは中世フランス語のmaistresseが14世紀に
外来語として入ってきて英語として定着しました。maistresseが
どのように変化してmistressになったかを説明しておきます。
Mr.の元になったmaistreも同じ説明になります。

maistresseもmaistreも姓の前につける形式的な語になると、弱く
発音するようになりました。その結果、mに続くaiはiに変わります。
15世紀の頃です。

16世紀にはmistress「ミストレス」、mister「ミスター」という
発音が定着しました。さらに省略は進み、17世紀にはmistressのtが
省略されて、最終的には「ミィスィス」と発音されるようになった
ということです。tが省略されたのは、口語で速く発音すると、
例えばroast beefやhalf past fiveのroastやpastのtがしばしば
発音されないのと同じことであると同書では説明しています。

mistressの省略形Mrs.はこのような経緯を経て、tが省略された形に
基づいて作られたというわけです。余談ですが、Mrs.は当初、
一般に上流階級の女性に対する尊称として姓の前につけられて
いましたが、だんだんと下層階級にも広がったということです。
日本でも「ミセス」という響きは“ハイソ”なイメージはありますね。

Mrs.は現在と同じく、既婚女性を示すことが多かったのですが、
17世紀から18世紀にかけて、Mrs.は未婚女性にも使われていました。
今だと未婚女性を示すのはMissですが、こちらもmistressの省略形と
いうことです。18世紀になると、Mrs.は既婚女性、Missは未婚女性と
はっきりと区別して使い分けるようになりました。


(2)素朴な疑問その2:today、yesterdayときて、tomorrowだけなぜ
“day”がつかないのか?
「今日」はtoday、「昨日」はyesterdayなのに、なぜ「明日」
だけは“day”がつかないのかというのが2番目の素朴な疑問です。

まず、todayについて説明しましょう。todayのtoは前置詞のtoで、
dayはtoの目的語です。toは時間を示す場合には、一般的に「~まで」
の意味を持ちます。todayではon this dayすなわち、特定の日=
「今日」を示します。

tomorrowのtoはtodayのtoと同じく、特定の日時を示す前置詞で、
morrowはtoの目的語となります。

morrowの1,000年前の形はmorgenでした。ドイツ語でmorgenは
「朝」です。英語でも「夜明け」「朝」の意味がありました。
併せてmorgenには「今日または特定の日の次の日」という意味も
あったということです。おそらく、「朝」が話題となるのが、
「翌日の朝」であることが多かったので「次の日の朝」=「明日」の
意味になったのだろうということです。

いかがでしたでしょうか。
みなさんは、中学時代から英語を勉強していて「不思議だな」と
ふと疑問に思ったことはないでしょうか?同書には英語にまつわる
素朴な疑問が79本と多数載っているので、もしかしたら、みなさんが
抱いている疑問が載っていて、解決してくれるかもしれません。


◆ソース◆
================================
『英語の謎 歴史でわかるコトバの疑問 』(角川ソフィア文庫)
https://www.amazon.co.jp/dp/4044003408 pp.81-82、188-189
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