※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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 皆さんは、「ピグマリオン効果」という言葉を今までに聞いたことがあるで
 しょうか。対日本人、対外国人の場合であっても、マネージャーになったら
 ぜひ知っておいて欲しい心理的効果です。どんな心理的効果なのかを今回の
 メルマガでは紹介します。

 「ピグマリオン」という名前は、ギリシャ神話を収録した古代ローマの『変
 身物語』(あるいは『転身物語』ということもある)に登場する王様の名前です。
 ピュグマリオン王が女性の彫像に恋焦がれ、王の願いに応えたアプロディテ神
 がその女性の彫像を人間化したと言う伝説に由来します。「彫像でも好きに
 なれば思いが通じて人間になる」というお話です。

 マネージャーをピュグマリオン王、部下を女性の彫像に例えて「ピグマリオ
 ン効果」と呼んでいます。強い期待を与えられた人間は、期待に応えようと努力
 をし、ついには成果に結びつくということが心理学の世界で知られており、上
 記の物語から「ピグマリオン効果」と名付けられたわけです。

 マネージャーと部下の関係でピグマリオン効果をもう少し詳しく説明すると
 1~4のようになります。

 “1.マネージャーが部下に何を期待し、またどのように扱うかによって、部下の
   業績と将来の昇進がほとんど決まってしまう。
 2.優れたマネージャーの特徴とは「高い業績を達成できる」という期待を部下
   に抱かせる能力のことである。
 3.無能なマネージャーは、このような期待を植えつけることができず、その
   結果、部下の生産性も向上しない。
 4.部下は部下で、自分に期待されていると感じることしかやらない傾向が強い。”

 (出所)“ピグマリオンマネジメント”、J.Sterling Livingston、『【新版】
 動機づける力―モチベーションの理論と実践 (Harvard Business Review
  Anthology)』、ダイヤモンド社

 いかがでしょうか。マネージャーの立場としてだけでなく、若い時に部下として
 マネージャーに仕えた時の立場からも、1~4に思い当たるフシがあるのではな
 いでしょうか。だとすれば、1~4を逆手にとって、ピグマリオン効果を使わない
 手はありません。

 みなさんがマネージャーとして仮に海外の勤務地に新しく赴任するとします
 (国内でも同じことですが)。外国人の部下と良い人間関係を築きたい考える
 としたら、相手を知ろうとすることから始めるはずです。部下の持ち味や強み
 を良く知り、可能性を引き出すためにはどうしたら良いと皆さんは考えますか?
 人事データベースを社内に整備している会社もあるでしょう。それを読めばい
 いのかもしれません。しかしながら、人事データベースに書ける紙幅には限度
 があります。その人らしさまでは人事データベースには書かれてはいないでしょ
 う。書かれていない部分を聞き出してあげることが大事です。

 相手のことをよりよく知るためには、コーチング・ツールを用いたコミュニケ―
 ションが有効です。

 ■コーチングに魔法は存在しないが、ヒーロー・インタビューは“準・魔法” 

 日本におけるコーチングの第一人者である本間正人氏が、著書『今すぐできる!
 英語deコーチング』(日本経済出版社)の中で提案しているコーチングのツー
 ルがあります。“ヒーロー・インタビュー”というツールがそれです。「コー
 チングに魔法はない」のだと本間氏は著書の中で諭していますが、ヒーロー・
 インタビューだけは特別扱いしており「準・魔法」と位置付けています。副作
 用もほとんどないと本間氏がイチオシするヒーロー・インタビューとはどのよう
 なコーチング・ツールなのでしょうか?ヒーロー・インタビューとそのやり方を
 上記の書籍から紹介したいと思います。

 ヒーロー・インタビューと聞いてまず思い浮かべるのは、プロ野球でしょう。
 野球の試合後に、勝ちチームの中からその試合で最も活躍した選手を選び、グ
 ラウンドに設けたお立ち台に立ってもらい、選手に向けて行うのがヒーロー・
 インタビューですね。本間氏の提案は、このヒーロー・インタビューを新しい
 勤務地に赴任した後になるべく早く、部下全員ひとりひとりに対して行うという
 ものです。

 ヒーロー・インタビューでは、これまでの仕事の中で活躍した話を好きなだけ
 語ってもらいます。だれでも活躍した経験はありますよね。マネージャーはそれ
 をしっかりと聴いて受け止めます。その時にマネージャーが気をつけなければな
 らないのは「それくらいのことで自惚れるんじゃない」というような上から目線
 のスタンスで聴いてはいけないということだけです。当たり前のことですね。

 本間氏によると、ヒーロー・インタビューを受けた人はとても元気になります。
 ヒーロー・インタビューを受けることにより「あのときはがんばった」「一生懸
 命やった」ということが、映像として頭の中に鮮明にイメージが蘇ってくるから
 です。「がんばったな」と思い出すだけでも元気になれます。

 日本語を使って日本人の部下に対してなら、野球中継のアナウンサーのノリで
 何とかヒーロー・インタビューできそうですね。では、英語ではどのようにヒーロ
 ー・インタビューをしたら良いのでしょうか。本間氏の同著書の中で、以下のよ
 うに質問すると良いと書いてあります。決まり文句として覚えてしまうのがいい
 でしょう。「いつ」「どんな」「どのように」といった具合に5W1Hに沿った質問を
 してゆけばいいわけですね。


 “When did you feel happiest in your work?
 これまでの仕事の中で一番うれしいと感じたのは、どんなときですか?

 What was the most memorable project that you worked on?
 もっとも記憶に残るプロジェクトは何ですか? 

 How did you feel when you completed?
 終わった時はどのような気持ちでしたか?

 What difficulties did you have to overcome?
 どんな困難を乗り越えなければならなかったのですか?

 Can you explain the steps you took?
 どのような段階を踏んだのかを説明してくれますか?”


 外国人の部下と良い人間関係を築こうとしても、組織の中ではマネージャーと
 部下の間という表面的なコミュニケーションになってしまいがちです。マネー
 ジャーや部下というポジション抜きに、心と心が通い合うコミュニケーションが
 必要になります。心と心が通い合うコミュニケーション作りのきっかけにヒーロー
 ・インタビューは効果的です。

 さて、皆さんも、明日からヒーロー・インタビューを試してみませんか?


 ◆ソース◆
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 1.今すぐできる!英語deコーチング 
   部下を育てる基本スキルと英語表現/本間正人
 http://books.rakuten.co.jp/rb/11933592/
 pp.32-35

 2.ビジネス基礎講座 新・組織論再入門 11のピグマリオン効果に関する説明
 http://www.bbt757.com/servlet/content/14313.html
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