※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン      
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┃    グローバルリーダーへの道          2014/12/18 配信
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 「時間とお金とエネルギーを費やして真面目に勉強しているのに、なかなか英
 語が話せるようにならない」と悪戦苦闘しているビジネス・パーソンの苦労話
 をたくさん聞きます。

 不動産英語講師のユキ―ナ・富塚・サントス氏は著書『英語貴族と英語難民』
 (総合法令出版)の中で、上記のような人々を“英語難民”と名付けています。
 そうした英語難民から「どうすれば英語ができるようになるのか?」を聞かれ
 ることが富塚氏は多いそうです。そのような時は、逆に「どうやって英語を勉
 強しているのか?」を聞き返してあげるようにしているのだと言います。
 その結果として分かったことが富塚氏にはあります。ほとんどの英語難民の人
 は似たような特徴ある勉強方法に取り組みが偏りがちです。それは「ストック
 中心」の英語勉強方法です。ストック中心の英語勉強方法をしている場合、ど
 のように改めたら良いのかというヒントを、『英語貴族と英語難民』から解説
 します。

 ■英語の勉強方法には「ストック」と「フロー」がある

 ストック中心の英語勉強方法とは、本やインターネット、参考書、英語講座な
 どあらゆるコンテンツから「これは便利な英語の言い回しだ。機会が訪れたと
 きにいつか使ってみよう」と知識として蓄えていくものです。この英語勉強方
 法は、知識を積み上げていくことにのみ力を注いでしまいがちになる点に注意
 しなければなりません。

 今本当に自分が一番伝えたいこと、コミュニケーションしたい内容に関心を置
 いているでしょうか。学習していることが、伝えたいことやコミュニケーショ
 ンしたい内容とは別物になってしまっていて、学習しながらも、「ここは学習
 スキットの中に登場人物のようにではなくて、自分なら本当はこういうことを
 伝えたいのに」とは思っていないでしょうか。この英語難民の勉強方法を分か
 り易く説明する方法として、「ストック」と「フロー」というイメージを使い
 ながら説明しましょう。

 以下の【表】にストックとフローを比較してその違いを見てみます。

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 【表】ストックとフローの比較

 ■基になるもの
 ストック(Stock): 状況、場面がありき
 フロー(Flow): 自分の感情、表現したい内容
         (自分の体験したビジネスシーンに限る)
 
 ■実効性
 ストック(Stock): 自分がぴったりと適合する表現を見つけることが
          できたときのみ有効
 フロー(Flow): 表現したい場面ごとに、表現したい内容を英語にして
         いくので、常に有効

 ■適切性(表現として伝わるか?)
 ストック(Stock): 状況に適合する可能性は低い
 フロー(Flow): 常に100%適合する

 ■具体例
 ストック(Stock):『これだけビジネス会話100』『伝わる表現100』
          『最低イディオム』『出る単語』
 フロー(Flow): 毎日のプレゼンを英語にし、ネイティブチェックを受けたもの、
         自分の日記をネイティブに修正してもらったもの
 
 【出典】『英語貴族と英語難民』(総合法令出版)p.85    
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 ストックは、参考書や英語講座のテキストに載っている状況の会話の流れの中
 で使っている表現なので、会議や接待、プレゼンなどある特定の場面を想定し
 ています。それらから学ぶ表現は、そのような特定の場面でしか残念ながら使
 えません。

 ストックは「場面やシチュエーションありき」の表現を抜き出し、これらを貯
 め込んでおく英語勉強方法となるため、ある状況下で自分の意見や感情を伝え
 ようとするときは、過去に積み上げた表現の蓄積の中から切り取って貼り合わ
 せなければなりません。自分が本当に伝えたい内容を適切に表現することはほ
 とんど不可能と言って良いでしょう。このような切り貼りした表現はネイティ
 ブが聴くと「あれ?」と違和感のある妙な表現になりがちです。自分が本当に
 伝えたい内容を適切に伝えるのには不向きです。

 ストックとは対照的な英語勉強方法がフローです。フローの英語勉強方法では、
 自分の感情や意見、つまり今本当に自分が一番伝えたい表現にフォーカスしま
 す。「場面やシチュエーションありき」ではなく「自分のフィーリングありき」
 であるところが決定的に違います。今本当に一番伝えたいという内容を英語で
 表現するために最適なものです。フローは自分の伝えたい感情からスタートし
 ますから、どのような場面でも間違いなく相手に伝わります。

 具体的な例で説明しましょう。
 明日、仕事でプレゼンテーションをしなければならないとしましょう。ストッ
 ク中心の英語難民は、グーグルの翻訳や過去に出版された「プレゼンテーショ
 ン表現集」「プレゼンテーションに欠かせない一言集」などをかき集め、そこ
 から使えそうな表現を切り貼りし、パッチワークのように組み合わせてプレゼ
 ンテーション原稿を作ります。

 一方、フロー・アプローチでは、まず自分の伝えたい内容を日本語で作成し、
 それを「伝わる英語」に置き換えていきます。自分が言いたいときに、伝えた
 い内容を通じる英語にします。

 フロー・アプローチはネイティブ・スピーカーに添削してもらうことが必要に
 なります。特に最適な英単語の選択、言葉の自然な言い回し、時制の対応には
 ネイティブ・スピーカーのチェックが必要です。具体的には、自分の伝えたい
 内 容を表現したいとき、実際の英語の話し言葉ではどう言うのかという観点か
 ら、ネイティブ・スピーカーにチェックしてもらいます。

 ■「responsible for」それとも「be involved in」?

 富塚氏が実際に経験した言い回しとして、「responsible for」と「be
  involved in」があります。J社の資産評価プロジェクトに富塚さんが実際に
 携わったことを英語にしたときのことです。あるプロジェクトに実際の担当者
 として関わり仕事を仕上げた事を意味したいなら、英語では「be involved in」
 を使います。この「be involved in」という表現が自分の仕事に対する深い関
 与を示すということは、学校教育では教えてくれません。また、この言葉の使
 い方は英語講座テキストにも出てきません。ネイティブ・スピーカーの先生に
 添削されるまで、富塚氏は知らなかったと言います。

 一方の「responsible for」は「ある事柄や分野、収益や費用に責任がある」
 ことを意味します。「responsible for」を使うと「社長として全責任を負っ
 た」という意味になります。

 いかがでしたでしょうか。
 「ストック中心の英語学習方法に偏っていた」という心当たりのある方は、
 明日から「フロー・アプローチの英語学習方法」も取り入れてみませんか?


 ◆ソース◆
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 英語貴族と英語難民
 http://www.amazon.co.jp/dp/4862804101
 pp.84-87、pp.128-130
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