※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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 皆さんは、「世界の“フツーの”ビジネスパーソンにはできて、日本のエリート
 が苦手なこととは何か」と聞かれたら、どんなことを思い浮かべますか?世界
 の多くの国、欧米だけではなく、中国、インド、シンガポール、韓国などのア
 ジア、そして中東、東欧や南米を含めた主要国で、大学・大学院の教育を受け
 たビジネスパーソンにはできるのに、日本のエリート社員には苦手なことがあ
 るのだと船川淳志氏は指摘します。船川氏と今北純一氏の共著書『そろそろ、
 世界のフツーをはじめませんか――いま日本人に必要な「個で戦う力」』(日
 本経済新聞出版社)の中から、世界のフツーのビジネスパーソンにはできて、
 日本のエリートにはなかなかできないこと6項目をみてみましょう。

 6項目は船川氏がグローバル人材育成と組織開発を過去20年間行い、世界70カ
 国、4万人のビジネスパーソンと対話をし、観察してきた体験から日本のビジ
 ネスパーソンが抱える課題を絞り込んだものです。みなさんも同じ苦手意識を
 持っていないかどうかをを確認してください。6項目のうち、紙幅の関係から
 今号では前半の(1)~(3)を、次号で後半の(4)~(6)をお伝えします。

 “(1)自分の意見・見解を、複数の人間、しかも専門の異なる初対面の相手
 にでも、気おくれすることなく、かつわかりやすく伝えることができる。”
 (「身内」以外に対する発信力と説明責任能力を備えているか?)

 日本人は、身内同士では問題なくコミュニケーションできますが、初対面で、
 しかも相手が複数であったり、専門分野が違うビジネスパーソンに対して、
 分かり易く伝えるための情報伝達能力を鍛えてきたとは言いにくいところがあ
 ります。根底には二つの原因があると船川氏は指摘します。

 一つ目は米国の文化人類学者であるエドワード.T.ホール氏が唱える「ハイコン
 テクスト文化とローコンテクスト文化」という識別法で言うところの、日本は
 ハイコンテクスト文化の国であるという点です。ハイコンテクスト文化におい
 ては、仲間同士であればお互いに相手の意図するところを察し合うことにより、
 ツーカーで気持ちが通じ合います。ハイコンテクスト文化では、言語によって
 情報伝達しようとする努力やスキルよりも、共有するコンテクスト(脈絡、状
 況、雰囲気、前後関係、背景など)の量に頼ります。このため、言語の受け手
 が、発言者と共通のコンテクストを共有していることを期待されます。コミュ
 ニケーションの成否は、話し手の説明能力よりも聞き手の理解能力に依存する
 ところが大きいというわけです。例えば、「そこの辺り(のニュアンス)をく
 み取って」という具合に同じ「空気」、つまり背景や脈略を共有していること
 を聞き手に要求する話し手が時々います。そのような話し手は、仲間以外の、
 コンテクストを共有しない人が相手だと、お互いに会話の糸口を見つけること
 もできず、会話も弾まず、相手の言わんとしていることを把握するのが難しく
 なります。

 一方、欧米はローコンテクスト文化です。コンテクストには依存せず、あくま
 で言語そのものによるコミュニケーションを重視するので、重要な情報を明確
 に伝えます。聞き手が話の意味を推測しなければならないようなあいまいな内
 容の発言は、発言者側の伝達努力不足でありルール違反であり、無責任なもの
 ととられます。

 二つ目の「阿吽の呼吸」「以心伝心」というハイコンテクストのコミュニケー
 ションも外国人に対しては機能しにくいものです。同書の共著者である今北氏
 は、海外で働いた際、「たった一人の日本人として、はるばる遠い異国からや
 ってきたのだから、英語やフランス語に苦労しているのは当たり前のこと。だ
 から、相手の方から手を差し伸べて、手取り足取り、あるいは、おんぶにだっ
 ことまでは言わないけれども、こちらの事情をくみとって多少のことは大目に
 みてくれてもいいのではないか、もうちょっと優しく接してくれてもいいので
 はないか」と海外に赴任した当初は毎日のように感じていたと言います。海外
 で同じような経験をした読者もいるのではないでしょうか。日本人同士のよう
 な甘えが通用しないからと言って外国人とコミュニケーションを取ることを諦
 めたり、居直って日本人のコミュニティの中に閉じこもってしまうのは最悪で
 す。そんなことをしてしまうと、当然のことながら、コミュニケーション・ス
 キルは伸びません。

 “(2)相手の話を聞いている時に、理解できないこと、不明なこと、興味を
 持ったことについて率直に質問することができる。”
 (周りの顔色をうかがわずに、聞くべきことを聞ける質問力、胆力、そして知
 的好奇心を備えているか?)

 日本人の場合、「話し手が言っている内容を理解できないのは自分の能力不足
 のせい。理解できていないのは自分だけかもしれない」と思い込んでしまう傾
 向が強いようです。上述したように、ハイコンテクスト文化においては発言者
 の説明能力よりも聞き手の理解能力に依存するところが大きいからかもしれま
 せん。さらに、話を途中で遮るのは失礼で、例え、話をその時点では理解でき
 なくても「人の話は最後まで聞く」ことが奨励されます。その結果、分からな
 い内容の話であっても、その時点で質問したり確認することなく、最後まで話
 を黙って一方的に聞くことになります。

 英語で説明を受けている時、聞いていて途中で理解しづらいことがあったとし
 ても日本式に“I see.”とか“Uhuh”と相槌を打って話し手に調子合わせてし
 まうと、話す側はそのままどんどん話を進めてしまい、余計に理解できなくな
 ってしまうというパターンをみなさんは経験したことはないでしょうか。「い
 まは分からないけれど、後で確認すれば何とかなる」と思いながらも、ますま
 す理解できなくなって何とかならなくなる悪いパターンです。理解できている
 ふりを一時的にすることによって発生する悪循環を断ち切るためには、とにか
 く、理解が追いつかなくなってしまったその時点で直ちに確認や質問をするこ
 とが重要であると、船川氏は述べています。

 具体的は“Let me clarify what you said.”とか“Could you clarify that?”
 “May I ask a question?”と、相手が話している途中でジェスチャーを入れ
 て相手の話に質問しても海外では失礼になりません。

 “(3)自分の見解について、異なる立場の他者からの質問や提案を受けた時
 に、建設的な対話を展開することができる。”
 (肩書き、年齢、学歴などの属性を理由に、相手の質問を封じ込めたり、反対
 に、質問をはぐらかしたり、逃げたりせずに向き合える対話力を備えているか?)

 日本人が苦手とするものが一般的に二つあると船川氏は述べています。一つは
 「恥をかく」ということです。もう一つは「正解」から外れてしまうことに対
 する恐怖心です。自分があらかじめ用意した原稿を読み上げることはできても、
 聞き手から出てくるさまざまな質問に対処できないというのは、間違ったこと
 を答えてしまうかもしれないという“恐怖心”と間違った答えを述べてしまう
 ことによって“恥をかく”という上記の二つの意識が複合的に影響していると
 考えられます。

 また、質問を受けた際に、権威主義を丸出しにして強弁や詭弁で質疑応答を避
 ける人も時々見かけます。海外では、強弁や詭弁で逃げた本人の評価はそれだ
 けでぐんと下がるのだと、今北氏も述べています。

 いかがでしたでしょうか。
 船川氏が上記で述べているのは、世界である程度以上の教育を受けたビジネス
 パーソンが備えているべき事の「中級」でしかないのだと言います。それにも
 かかわらず、日本では、上級国家公務員試験に合格した人、あるいは、大学院
 卒の「エリート社員」でさえも四苦八苦していることばかりであると警鐘を鳴
 らしています。

 後半の(4)~(6)は来週のメルマガで解説します。お楽しみに。


 ◆ソース◆
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 そろそろ、世界のフツーをはじめませんか―いま日本人に必要な「個で戦う力」
 http://www.amazon.co.jp/dp/4532318823/
 pp.15-18、188-205 

 ハイコンテクスト文化とローコンテクスト文化
 http://www.pan-nations.co.jp/column_001_005.html
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