※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン      
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┃    グローバルリーダーへの道          2015/06/01 配信
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 皆さんは「根回し」に対してどのようなイメージを持っているでしょうか。
 「根回し」と聞くと、何か陰湿でネガティブなものと捉える傾向があるのでは
 ないでしょうか。「根回し」が見えるところで行われるのではなく水面下の見
 えないところでコソコソと行うことに原因があるのかもしれません。そのため
 でしょうか、日本では「根回し」をできればないほうが望ましい、いわば「必
 要悪」の存在に捉えている人も多いと思います。

 今号のメルマガでは『伝説の外資トップが公開する 世界標準のNEMAWASHIの
 技術』(CCCメディアハウス)の内容を紹介します。著者の新将命氏は、シェル
 石油、日本コカ・コーラ、ジョンソン・エンド・ジョンソン、フィリップスを
 含む世界企業6社で40数年にわたり社長職などを歴任した国際派ビジネスマン
 です。

 英語では、事前の準備や下調べのことをホームワーク(Homework)と言います。
 ホームワークは公式の活動ではありませんが、結果がうまくいくかいないかは
 ホームワーク次第だと新氏は断言します。「ネマワシ」はホームワークを構成
 する重要な要素の一つで、欠くべからざる要素なのだと新氏は言います。新氏
 の失敗談としてネマワシ不足の結果、一度は米国総本社から日本法人社長職の
 座の解任を言い渡された経験があったのだと同書の中で打ち明けています。米
 国総本社での経営会議で、本社の経営方針に断固反対を表明したところ「本社
 の方針に従えないのならクビだ」と日本法人社長職を解任されてしまったので
 す。事前にNEMAWASHIさえしておけば、本社の方針のバックグラウンドや真意
 を分かったであろうし、そうすれば会議で反対を唱えるにしても、より妥当な
 着地点が見つかったはずだと振り返ります。新氏は当時、既に長いキャリアを
 外資系企業で積んでいましたが、解任された体験がなければ「米企業の会議と
 言えどもNEMAWASHIは必要」とは実感しなかったかもしれないと言います。世
 界に通じるNEMAWASHIを考えるようになったきっかけは、この解任された体験
 にあるのだと新氏は言います。

 新氏によるとネマワシは世界中で行われていますが、日本的ネマワシと世界標
 準のネマワシでは異なる部分があるのだと言います。同書では日本的ネマワシ
 を「根回し」、世界標準のネマワシを「NEMAWASHI」として便宜的に表記を区
 別していますので、本メルマガでも同表記に倣います。

 米国でNEMAWASHIと言えば、代表的なのが「ロビー活動」です。ロビー活動とは、
 企業や団体、あるいは外国政府から依頼を受け、政治家や官僚に対してその企
 業や団体にとって有利な政策を行うように働きかける活動のことです。
 そのロビー活動ですが、概して日本は弱いと言われています。ホワイトハウス
 や米議会へのロビー活動では、既にだいぶ前から中国や韓国に大きく水をあけ
 られているとも言われます。「根回しは日本固有のもの」と自負する人が多い
 のにもかかわらず、なぜ日本は国際舞台に出るとNEMAWASHI、すなわちロビー
 活動が弱いのでしょうか。その問いに対し新氏は、日本的な「根回し」は、日
 本国内限定でしか通用しない“ガラパゴス型”だからなのではないか、世界で
 通用するNEMAWASHIに進化できていないからではないかと考えています。

 では世界で通用するNEMAWASHIとはどのようなものでしょうか。10ケ条に新氏が
 まとめています。


 1.NEMAWASHIは組織を泳ぐ必要悪ではなく、組織を動かす正当な必要技術である

  ビジネスや国際政治の世界では、日本でも欧米でも大事なことをネマワシな
  しに決めることはありません。ネマワシを談合や社内政治と同一視する否定
  的な意見もありますが、世界の一流ビジネスパーソンは、必ず洗練された
  NEMAWASHIスキルを身につけています。

 2.義理人情型の根回しだけでは、グローバルビジネスで通用しない

  ビジネスは結果です。義理人情も、結果を求めるための重要な要素の一つで
  はありますが、日本人は概して義理人情に頼りすぎる傾向があります。その
  ため、洗練されたNEMAWASHIスキルを身につける努力を怠りがちです。

 3.NEMAWASHIは大義を背負った者が勝つ

  利(Benefit)<理(Logic)<大義(Cause)。
  日本的根回しが人間関係だけで進んでしまうのと違い、世界のNEMAWASHIは理
  論的に納得でいないオファーは受け入れません。まず中心にLogic(理)のある
  ことが必要条件です。欧米人と話していると、彼らの頭の中には常に“What 
  is in it for me”つまり「それが私に何の利益をもたらずのか」という言葉
  があることを痛感します。さらに、欧米ではCause(大義)はLogic(理)とBenefit
  (利)を超える存在です。日本人にあっては人間関係を超えるのが大義です。
  利益が少なく理屈が整っていなくても、そこにCause(大義)があれば人は動くと
  いいます。何より大切なのがCause(大義)になります。「I(私)とYou(あなた)」
  という対立的な利ではなく、「We(私たち)」という双方的全体の利にポジショ
  ンを取り、長期的視野で理を説くのが大義を背負ったNEMAWASHIの基本です。

 4.NEMAWASHIの段取り

  NEMAWASHIの段取りは世界共通です。
  第1段階:賛成派を固めます
  第2段階:キーマンを味方につけ、中間派を取り込みます
  第3段階:最後に反対派を攻略します

 5.嫌な相手へのNEMAWASHIほど手間をかけて丁寧に行う

  嫌な相手、苦手な人物に対するNEMAWASHIは、理と利をもって臨みます。
  嫌な相手、苦手な人物ほど、中間派を取り込むキーマンとなります。
  時には、仲介者を立てる手間も厭わずに丁寧に行います。

 6.NEMAWASHIを説得だと考えるのは二流

  NEMAWASHIのスタート段階では、情報収集8割、説得2割と心得ます。
  どういう形にすればプランが通るか、着地点を探るのもNEMAWASHIの機能です。
  説得で粘るのは着地点が決まってからにします。
  いきなりすべてのカードを見せてしまうのは下手な交渉の仕方です。相手の
  YESを得るにはまず相手の考えを知ることから始めます。「彼を知り、己を
  知れば百戦危うからず」

 7.NEMAWASHIはマージナルな過半数を取っても勝ったと思わない
 
  世界のNEMAWASHIの安定多数は75%です。
  多数決ならば過半数を取れば勝ちですが、それは会議の場合です。非公式な意
  思確認の作業であるNEMAWASHIでは、最終局面で寝返る人物が出たら負けてし
  まうおそれがあります。自分がNEMAWASHIしているということは、必ず相手も
  NEMAWASHIをしていることを忘れてはなりません。

 8.NEMAWASHIは一度成功すればそこがゴール――ではない

  NEMAWASHIはTRUST(信頼)、TALK(話す)、TIMING(タイミング)の三つのTで支え
  られています。すなわち、相手の信頼を得るために、適切なタイミングで途
  中経過を伝えることが必要です。一度ネマワシした相手には、必ず途中経過
  をレポートし続けるのが世界のNEMAWASHIの常識です。信頼を損なう行動は禁
  物です。

 9.メールでNEMAWASHIするべからず

  NEMAWASHIの大原則はFace to Face(フェイス・トゥ・フェイス)。メールで
  ネマワシするような人物はナイーブと見なされ、相手にされないのが世界の
  NEMAWASHIの常識です。メールはネマワシするにはリスクが高い手段です。

 10.世界でも日本でも結局NEMAWASHIの切り札は人間力
  日本でも世界でも「人物を見込んで」YESという事はあります。
  コネクションや過去の付き合いとは関係なく、話し振り、物腰からその人物
  の力量を認め、意見がYESに傾きます。世界のNEMAWASHIで「あの人が言うなら」
  と合意が形成されるのは、義理人情によるのではなく、人物の器(人間力)に
  動かされたことを意味します。


 いかがでしたでしょうか。
 皆さんの中でも「ネマワシ」という言葉の印象が大分変ったのではないでしょ
 うか。日常的な仕事を日常的な範囲で、従来通りにこなすのであれば、「ネマ
 ワシ」は要りません。「ネマワシ」は意欲的で革新的なビジネスパーソンにこ
 そ必要な地ならしのスキルです。地ならしの手段に過ぎないのではありますが、
 スキルがないと一歩も進みません。「ネマワシ」は避けては通れないスキルの
 一つで、日本でも世界でも同じことです。ただし、グローバルリーダーを目指
 すのであれば、日本の「根回し」と世界の「NEMAWASHI」では中身が少し違う
 ことを覚えておく必要は十分にありそうです。


 ◆ソース◆
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 伝説の外資トップが公開する 世界標準のNEMAWASHIの技術
 http://www.amazon.co.jp/dp/4484142309/
 pp.1-27
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