※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン      
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┃    グローバルリーダーへの道          2015/07/16 配信
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 本メルマガの読者の皆さまが勉強している目的は、英語の専門家になることで
 はなく、国際的なビジネスをするためのコミュニケーション手段としてだと思
 います。今号は、そんな同じ目的を実現して活躍しているスターバックスコー
 ヒージャパンの元CEOだった岩田松雄氏が、米国のビジネススクール留学試験
 受験時代から自身の英語勉強法を振り返って執筆した『私はかつてTOEIC300点
 だった 岩田式英語勉強法』(講談社)を紹介します。

 岩田氏は日産自動車に入社し、30歳でビジネススクール留学を目指し、UCLAア
 ンダーソンビジネススクールに派遣留学した後、人生が変わります。留学から
 帰国して日産自動車に復職した後、外資系コンサルティングに転職、日本コカ
 ・コーラ役員にヘッドハンティングされ、43歳の若さでゲーム会社のアトラス
 社長に就任、その後もタカラ常務、ザ・ボディショップCEO、スターバックス
 コーヒージャパンCEOとトントン拍子に華麗な出世を遂げた人です。30歳「TOE
 IC300点」からスタートした岩田氏は2000時間(毎日3時間で2年間)以上の留学
 準備時間を投入して、900点まで高めていますから、相当な勉強量をこなす努力
 家です。岩田氏が英語の勉強効率を最大限に高めた結果たどり着いた方法が、
 「捨てる」勉強法と「回す」勉強法です。1日3時間の英語の勉強時間が漫然と
 ではなく高効率というのがポイントです。


 ●「捨てる」勉強法

 よく英語の勉強というと「英語のニュースを聴け」と言われます。実際、会社
 の行き帰りに聴いている人は多いと思います。「それだけで英語の勉強をして
 いるつもりになっていないか?」「果たしてそれは効率の良い勉強法なのか?」
 と岩田氏は疑問を呈します。

 例えば、最近の大きな国際ニュースはギリシャの債務延滞の問題ですが、NHKの
 BSニュースにチャンネルを合わせると、英国の国営放送BBCのニュース番組を観
 ることができ、話している英語が何となく理解でき英語が聴き取れることに喜
 んでしまいがちです。皆さんの中にも、似たような経験をしたことのある方も
 いるのではないでしょうか。英語のニュース番組に出てくる単語の多くは、事
 件や時事問題に関連する英語です。難しい単語の意味が一つ二つ分からなくて
 も、全体の意味は何となく理解できます。これは英語ニュースを聴いたり英文
 記事を読んだりするうえで、正しい取り組み方だと教わってきました。しかし、
 例えば「MBAを目指したり学んだりしているビジネス・パーソンが、漫然と英語
 ニュース番組聴いているとしたら、その時間はもったいない。効率的とは言え 
 ない」と岩田氏は言います。

 一般の英語のニュースに出てくる単語と、経営分野で必要とされる単語は違い
 ます。MBAを目指したり学んだりしているビジネス・パーソンが聴くべきニュー
 ス番組は、例えば、ブルームバーグニュースのような経済専門チャンネルとい
 うことになります。例としてvolatilityという英単語を耳にしたことがある方
 もいるかもしれません。ビジネス英語の世界では、「リスク」や「ばらつき」
 を意味するvolatilityは頻出単語です。ギリシャの債務延滞問題では、ギリシ
 ャが「ユーロ圏離脱する」「しない」という悲観論と楽観論を日替わりで行き
 来して、為替相場も株式相場も乱高下してvolatilityが高い状態が続いている
 と経済ニュースは報じています。一般的なニュースを聴いていて、volatility
 という単語が出てくるかというと、稀です。しかし、volatilityという単語を
 知らないと、ビジネス・パーソンとの会話で突然volatilityという単語が出て
 きたときに、その意味を推測することはかなり難しいことです。自分の関係す
 る業務分野の英単語は、自分専用の英単語帳を作ってひたすら覚えます。業務
 分野の英単語は知っているか知らないかで勝負が決まりまるのだと岩田氏は言
 います。

 経営分野などの英語に精通しなければいけないビジネス・パーソンが、一般の
 英語ニュースを聴いているとしたら、「自分にとって今すぐに必要とされる目
 的」とは関係のない英語を聴いていることになりますから、それは残念ながら
 “非効率な勉強法”ということになります。仕事しながら忙しい中で英語を勉
 強するのであれば「目的に直結する勉強だけする」、反対に言うと「目的と関
 係のない勉強は(それがいくら面白くても)捨てる」ということが必要です。


 ●「回す」勉強法

 英語学習に関して、岩田氏は「量」の勉強と「質」の勉強の両輪が必要だと言
 います。「量」の勉強と「質」の勉強のどちらかが欠けると、英語力の伸びが
 鈍ります。「量」の勉強とは、たくさん読む、たくさん聴く、たくさん問題を
 解くことを意味します。一方、「質」の問題とは、例えば

 (1)リスニングなら、ただ聴き流すだけでなく、スクリプト(原稿)を確認
 しつつ、単語や表現や内容を理解しながら聴く。時々はディクテーション(聞き
 書き)に取り組んでみる。ディクテーションは労力と時間がかかりますが、「効
 果絶大」なのだと岩田氏は勧めます。

 (2)リーディングでは、知らない単語を調べつつ、内容を理解しながら精読
 します。ただし、一度目のリーディングでは辞書を引かず、全体で何が書いて
 あるのかを理解したうえで、何度も出て来るキーワードの意味がわからなかっ
 たら調べます。そして自分専用の英単語帳を作ります。

 英字新聞・雑誌を斜め読みしたり、通勤電車でリスニングしている人が、聴き
 取れない単語をそのままろくに調べもせずに、ただ毎日聞き流しているだけだ
 としたら、それは「量」の勉強をしているにすぎません。「量」の勉強は読み
 流し、聴き流しに近いので、その気になればこなせるでしょう。しかし、「量」
 の勉強だけで勉強している気になってはいませんでしょうか。その日の夜にス
 クリプトを読んで、聴き取れなかった単語を調べ、内容が理解できるまで聴き
 直す勉強が「質」の勉強です。さらに、岩田氏は音読も強く勧めます。同じ文
 章を10回以上もきちんと声に出して音読すると言います。

 いかがでしたでしょうか。
 「量」の勉強が、敷居が低いのと比べて、「質」の勉強には集中力も根気も必
 要です。人間は易きに流れがちなので、「質」の勉強をついつい後回しにして
 結局のところ怠りがちです。英語に挫折する原因は多くの場合、「質」の勉強
 がなおざりになっており、「量」の勉強だけに偏りがちなのだと言います。
 「質」の勉強こそを手を抜かずにやることが、実は英語が短期間で効率的に上
 達する秘訣なのですね。
 

 ◆ソース◆
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 私はかつてTOEIC300点だった 岩田式英語勉強法
 http://www.amazon.co.jp/dp/4062191121
 pp. 27‐31 48‐49
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