※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。
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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン
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┃ グローバルリーダーへの道 2015/09/24 配信
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取引やコラボレーションするなら、読者のみなさんは“uncomfortable”な関
係と“comfortable”な関係とどちらを好みますか?
「“comfortable”な関係のほうが良いに決まっているではないか」と思うか
もしれませんが、今号のメルマガでは敢えて“uncomfortable”な付き合いを、
取引先やコラボレーションとの間で望む世界的企業がテーマです。
読者のみなさんは仕事上で、長いつきあいのある取引先やコラボレーション先
を持っていると思います。その取引先やコラボレーション先と関係がうまくい
っていて別段問題がない場合、以下の(1)(2)のどちらを選ぶでしょうか?
(1)そのまま取引・コラボレーションを続ける。
(2)取引・コラボレーションを定期的に見直す。
実績や付き合いと重視する日本人としては「(1)そのまま取引・コラボレー
ションを続ける」を選ぶというケースが多いのではないでしょうか?
人間は変化よりも安定を求めるので、うまくいっているものをわざわざ変える
ことに対して不安があります。担当者の立場とすれば、実績もあって勝手が分
かる相手と長く付き合いたいと思うのが人情だと思います。ですので「(2)
取引・コラボレーションを定期的に見直す」という考え方に対してはやや違和
感を覚えます。
しかしながら、『グローバル企業のトップが実践する激変の時代に成功するた
った1つの考え方』(KADOKAWA)によると、米半導体大手のインテルでは「
(2)取引・コラボレーションを定期的に見直す」というのが常識なのだと言
います。なぜなのでしょうか。同書の著者で米インテルの日本法人の元トップ
を務めた吉田和正氏によると「同じ取引先と仕事を続けていると現状を維持し
たいという気持ちが強くなり、新たなアイデアが生まれにくくなる」からだと
言います。
吉田氏が米インテルの若手社員だった時、これまで吉田氏が何度か付き合いの
ある取引先に、今回も引き続いて別の仕事を頼もうとしたところ、当時の上司
から「他の企業の見積もりはとったのか?」と指摘されたことが珍しいことで
はなかったと当時を振り返ります。米インテルの取引先になることができれば
嬉しいことですが、米インテルは取引先に対してどのようなことを求めている
のでしょうか?どのようにすれば米インテルと長期間にわたり取引ができる関
係になれるのでしょうか?
誤解のないように付け加えておくと、米インテルで実績や人との付き合いを軽
視していたというわけでは決してありません。グローバルな環境においても、
長年育んだ人間関係がプラスに働くことは多いと吉田氏は言います。ただし、
その人間関係はお互いの信頼関係がしっかりと築けていることに加えて、常に
新しい仕事にチャレンジし続けているということが前提になります。米インテ
ルだけでなく、世界ではほかのエクセレント・カンパニーも同じことを取引先
やコラボレーション先に求めているのではないのでしょうか。特にエクセレン
ト・カンパニーと取引・コラボレーションする際には意識しておくと良いヒン
トになります。
たとえ長く付き合っていても、取引先やコラボレーション先が単に現状維持や
安定を求めている相手という関係であるだけなのであれば、その取引先やコラ
ボレーション先に足を引っ張られてしまって、米インテルにとってもマイナス
に作用してしまう可能性があるという考え方です。
つまり、「どんな時でも現状に満足してはいけない」というのが米インテルの
考え方だというわけです。変化を迫られる前に自ら変化すると同時に、取引相
手にも変化を求めるくらいでないと、半導体の王者と言われる米インテルとい
えども、グローバル競争では生き残ることができないということですね。
素晴らしい技術を持っている日本メーカーが苦戦しています。安定を求めて、
変化を避けていることに原因の一端があるのではないかと吉田氏はズバリ指摘
します。「うまくいっている現状を変えたくない」という気持ちを封印するこ
とが、未来志向のビジネスパーソンに求められる考え方です。
冒頭の“uncomfortable”“comfortable”の話で言うと、「comfort zoneに留
まっていてはいけない」と米インテル勤務時代の上司から若き日の吉田氏は言
われたと言います。自分が心地よいcomfortableな状況に安穏としていては、
グローバル競争から取り残されるということですね。
いかがでしたでしょうか。
吉田氏が米インテルに在籍したのはPCが全盛で、米インテルが世界のCPU市場で
独占的な地位を占めていた時代です。米インテルは独占的な地位に胡坐をかく
ことなく、常に緊張感を持ってビジネスしていたことが同書から伝わってきま
す。それでもなお、時代は変わり、あっという間にスマホが主流になり、PCの
販売台数が減る中、PC向けCPUが事業の柱だった米インテルの業績や株価に翳り
が出てきています(米インテルの株価の推移は下記◆ソース◆参照)。常に緊張
感を絶やさない米インテルでさえもグローバル競争では簡単には生きていけな
いほど厳しい時代に突入しているのだということを思い知らされます。
◆ソース◆
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『グローバル企業のトップが実践する激変の時代に成功する
たった1つの考え方』(KADOKAWA)
http://www.amazon.co.jp/dp/4041018404
pp.183‐188
米インテルの株価の推移(10年)
http://goo.gl/kx5Tw5
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