※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、
本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。
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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン
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┃ グローバルリーダーへの道 2015/11/19 配信
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皆さんは、今まで存在しなかった独自の商品やサービスを世の中に初めて出す
皆さんは、今まで存在しなかった独自の商品やサービスを世の中に初めて出す
ことになり、それにふさわしいインパクトのあるネーミングを付けることに悩
んだことがないでしょうか。それがグローバル市場であれば、無意識のうちに、
既存の英語の枠の中から言葉を探してしまいますよね。すると、どうしてもイ
ンパクトに欠けてしまいます。今回のメルマガのテーマは、商品やサービスの
(英語風ではありますが)、斬新なネーミングにまつわる驚きのエピソードを
『君は英語でケンカができるか?』(クロスメディア・パブリッシング)から
ご紹介します。
ソニーを「世界のソニー」として一躍有名にした製品が、皆さんもご存知のヘ
ッドホンステレオ“Walkman”でした。Walkmanは日本だけでなくもちろん世界
で通じる商品名ですが、Walkmanという単語は実は正確な英語ではありません。
典型的な和製英語で、しかも造語です。正確な英語としてWalkとmanを結びつ
けるなら、WalkerかWalking manです。
今でこそ違和感はありませんが、Walkmanという商品名は正確でない英語だっ
たため、日本のソニーからも米国のソニーからも英国のソニーからも当初は不
評だったというエピソードが同書の中で打ち明けられています。著者は弥生の
社長から転身して2006年にライブドアの社長に就任して有名になった平松庚三
氏です。平松氏はWalkman発売当時ソニーに在籍しており、海外広報部係長と
してWalkmanの広報活動を担っていました。「Walkmanという商品名ってどうな
のよ?」という意見を巡って、ソニー社内が揺れに揺れていた様子を同書に記
しています。
Walkmanという名前は、「屋外へ持ち出して、歩きながら、動きながら楽しむ」
というコンセプトに基づき、当時の開発スタッフが案出したものでした。その
名前に当時の会長だった盛田昭夫氏が乗っかりました。ソニー社内には「こん
な妙な和製英語はとんでもない」といきまく反対派も多かったと言います。そ
うした反対派を盛田氏が「使うのは若い人だ。若い人たちがそれでいいと言う
のだからいいじゃないか」「英語でなければエスペラント語だと思ってくださ
い」と押し切ったと言います。
ところが、いざ海外で発売された段階ではWalkmanではない違う商品名だった
のだと言います。ソニーアメリカではWalk about(歩き回る)から派生させた造
語で“Sound about”という商品名で発売されました。米国の担当者から平松
氏は激しく突き上げられ、「“Walkman”はストリートでヤクを売っている売
人を連想させる」とまで言われたと平松氏は述懐します。それで「ちょっと
聴いてみる」というニュアンスの“Sound about”という商品名で発売してし
まいました。
これを聞いたソニーUKの担当者は「アメリカ人の英語感覚はひどいな」と言っ
て、「隠れて聴く」と言った意味合いになる“Stow away”の商品名で発売し
てしまいました。Stow awayには密航者という意味もあります。
海外の担当者らからWalkmanのネーミングにケチを付けられた当時の平松氏は、
最初は現地法人の考えに同意して、盛田氏に以下のように意見したそうです。
「いつも、“Market globally, Communicate locally”とおっしゃって、マー
ケティングは現場に任せておられるじゃないですか。今回は現地の市場調査で
も、“Walkman”という名前では売れないという結果が出ているのですよ」。
普段はそこまで怒ったりしない盛田氏が血相を変え憤慨しつつ、平松氏に「馬
鹿も~ん!」と唇を尖らせ、ダミ声でまくしたてて「Walkmanこそがソニー初
のグローバル・プロダクトなのだ」という信念を滔々と説き、盛田会長直々の
通達を世界中のソニーに出して、「今後、世界中すべて“Walkman”という名
前に統一せよ」と命じたと言います。
“Walkman”という商品名がどのように最終的に世界中に根付いていったかと
いうと、来日した外国人、特に来日した外国人ミュージシャンがお土産として
日本の商品名の“Walkman”のロゴが入った製品を母国に持ち帰り、“Walkman”
の名前がクチコミで世界中に広まったのだと言います。
盛田氏が言いたかったのは、世の中に今までなかった、自分たちが創造した製
品からは、それにふさわしい新しい世界語が生まれるということなのでしょう。
「Walkmanは英語でも日本語でもない。ソニー語だ。いつかWalkmanがWebsterに
載る日がきっと来る」という自身たっぷりの名言を盛田氏は残しているのだと
いいます。Websterとは米国最大の英語辞典ですが、1986年には英国の『オクス
フォード英語辞典』にまで載ったと言います。海外の権威ある辞書ですら、
Walkmanという和製英語を世界語として認めたわけですね。
いかがでしたでしょうか。
世界中どこへ行ってもWalkman はWalkmanであるように、名前も世界共通に統一
する必要がある、そしてソニー独自の製品にはソニー語の命名で良いという盛
田氏のぶれない信念で貫かれています。そう言われてみると、ソニーのゲーム
機“Playstation”も見事な和製英語のネーミングであることに気がつきます。
英語を超える素晴らしい表現ですね。さて、みなさんなら自分の組織が扱う新
商品・サービスにどのような和製英語のネーミングをつけますか?
◆ソース◆
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『君は英語でケンカができるか?』(クロスメディア・パブリッシング)
http://www.amazon.co.jp/dp/4844373994
pp.101-108
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