※本メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、

 本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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┃ ┃ 『実践ビジネス英語講座』 メールマガジン     
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┃    グローバルリーダーへの道          2016/10/06 配信
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 組織の一員として海外で仕事をする場合、最も大事なことは何でしょうか。
 実際に外国に住んだことがないと「最も大事なことは語学なんじゃないか?
 特に英語ができないとどうしようもないだろう」と思いがちです。もちろ
 ん語学は大事です。言葉を流暢に操ることができれば日常生活に困ること
 はありません。しかし、サラリーマンの処世術は世界中どこへ行っても同
 じで、そこは大人の駆け引き、根回し、策略、競争といったものから逃れ
 ることはできません。

 『国連でも通じる世界の非ネイティブ英語術』(KADOKAWA)の著者で15年ほ
 ど日本と海外を行き来し、その合間に、米国、日本、イタリア、英国で、
 経営コンサルティングファーム、国際連合食糧農業機関 (FAO)の情報通信
 官などに雇われて働き、世界数十カ国の海千山千の人々と働いてきた谷本
 真由美氏によると、海外で仕事する場合、語学はもちろん大事ですが、
 「『大人の流儀』のほうが物を言うことがある」といいます。「『大人の
 流儀』なら任せとけ!」という人もみなさんの中にもいるかもしれません。
 しかしながら、同書によると、どうも海外のツワモノは日本の組織では見
 たこともないようなツワモノばかりなのです。今号のメルマガでは、そん
 な谷本氏が見てきた数々のツワモノの実録例をひとつ紹介します。

 ◆ヨイショの達人
 谷本氏が経営コンサルティングファームに勤務していたとき、ベテランの
 コンサルタントから言われた言葉があると言います。
 「あのね、仕事っていうのはヨイショがうまくできれば99%成功したよう
 なもんなのよ」――。この人は、専門知識や戦略思考の点では同僚からの
 受けがイマイチでしたが、顧客受けは大変良く、営業成績は常にトップク
 ラスでした。「社内では受けがイマイチでいろいろと言われても、ヨイシ
 ョを駆使して実績を出しているから何とかなる」という意味で上の言葉を
 述べています。

 具体的にはどのようなタイミングで何をヨイショすればいいのでしょうか?
 ヨイショというのは要するに相手の良い所を見つけ出し褒めまくります。
 褒められて悪い気分になる人はいません。「ゴマをすっているな」と分か
 ってはいてもそこは人間です。嘘だと分かっていても、自分に対して自尊
 心をくすぐって来るようなことを言ってくる人を好きになってしまうので
 すね。これは海外でも日本でも同じことなのですが、海外のヨイショは日
 本以上です。ヨイショが恐ろしくうまい人というのは、英語がブロークン
 で相当適当でも、なぜか組織の幹部になっていたり、巨大な金額のプロジ
 ェクトを受注してきたりします。谷本氏によるとサラリーマンの仕事の90
 %は人間関係だと言います。とりあえずヨイショがうまければ語学や専門
 知識が微妙でも何とかなったりしてしまうものなのだとか。

 ◆「ヨイショが生きがい」のイタリア人職員の場合
 実例の一人は、谷本氏が目撃したイタリア人です。名前をエンリコ氏とし
 ましょう。エンリコ氏は勉強が大嫌いで専門知識もかなり適当です。エン
 リコ氏の英語はイタリア語訛りが凄まじいうえに、英語の所々にはイタリ
 ア語が混ざります。英語の訛りを矯正しようとか、間違ったら恥ずかしい
 とか、そういう思考とは無縁です。

 エンリコ氏は職場では昇進が一番早く、シニアマネージャーです。エンリ
 コ氏のヨイショのコツは360°の全方向が対象ということです。直接的に
 利害関係がある自分の上司や同僚だけにヨイショするわけではありません。
 エンリコ氏のヨイショは、毎朝、職場の入口に立っている警備員氏に挨拶
 するところから始まります。
 「チャーオ!リカルド。今日の君のヒゲはすごくいい。マーロン・ブラン
 ドよりいい男だ。これぞ男というものだよ。俺が女なら、もうすぐに結婚
 を申し込むね!」――。
 このようなハイテンションで大げさなヨイショの光景にたまたま出くわし
 てしまうことがあります。ヨイショに合わせてフォローしようとするも、
 適切な言葉も見つからず、顔が引きつらないように気をつけながらただニ
 コニコして「その通りだね!」という具合にうなずいているほかありませ
 ん。今日「たまたま」目撃したというわけではなく、実は毎朝、エンリコ
 氏は褒めちぎっているんですね。

 エンリコ氏が職場のビルに入ると、ありとあらゆる年齢の女性たちが「チ
 ャーオ エンリコ!」と愛想を振りまいていきます。

 それもそのはずで、エンリコ氏はどんな女性でも良い所を見つけ出し、褒
 めまくるのです。どの女性に対しても自分の恋人候補であるかのように情
 熱的に扱います。不細工だから、ずっと年上だからという理由でヨイショ
 の手を抜くことはありません。エンリコ氏はさまざまな人の誕生日や記念
 日、家族関係を記憶し、折を見て小さな花束、クマの人形、小さなチョコ
 レートなどを差し入れてお互いの信頼関係を日頃から築いています。

 エンリコ氏は、職場の社員食堂のおばちゃん、掃除のおじさん、運転手さ
 ん、受付嬢、メッセンジャーボーイなどありとあらゆる人にもこのヨイシ
 ョを欠かしません。

 日本人だったら赤面しそうな強烈なヨイショをすることでさまざまなとこ
 ろから情報が入ってくるうえに、相手に気に入ってもらえるので仕事につ
 ながっているのです。英語に凄まじい訛りがあっても、そういう英語でヨ
 イショを連発するご愛嬌がかえってエンリコ氏のチャームポイントになっ
 ています。大多数の人は恥ずかしかったり、プライドが邪魔して歯が浮く
 ようなあからさまなヨイショは言えません。日本語でも言えないのに、ま
 してや母国語でない英語だとなおさらハードルは高くなります。しかし、
 言う人がほかにいないからこそ、受ける側にとって強烈に印象に残るとい
 うわけですね。

 いかがでしたでしょうか。
 仕事関係の人に対して英語でヨイショして気分良くしてもらうためにはど
 のように言ったらよいのか、なかなか難しいですよね。みなさんは、英語
 でヨイショしたことがありますか?また、ヨイショされていると分かって
 いても思わず自尊心をくすぐられてしまったことはありますか?それはど
 んな一言でしたか?今回ご紹介した一例以外にも、日本人が普段は思い描
 けないような、アンテナを張っておくべきポイントが世界のビジネスシー
 ンにはあふれています。「単に『読む・書く・話す・聞く英語』を超えた
 “英語(処世?)術”」――みなさんも見つけてみてはいかがでしょうか。


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 ◆ソース◆
 『国連でも通じる世界の非ネイティブ英語術』(KADOKAWA)
 https://www.amazon.co.jp/dp/4046015322
 pp.76-85
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