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今号のメルマガは、ビジネス交渉で使われるテクニックについてです。書籍『世界基準のビジネス英会話』(三修社)から紹介します。同書によると、欧米では、ビジネス交渉の基本的な戦略や戦術をビジネススクールなどできちんと学習しているのだと言います。ビジネス交渉にはテクニックが存在し、海外では多くのビジネスパーソンがそのテクニックを使っているにもかかわらず、日本人には馴染みが薄いと思われます。今回は、自らが交渉テクニックを使うときに知っている必要があるだけでなく、交渉にあたっての相手の攻め方を読むためにも知っておきたい代表的なテクニックを二つ紹介します。さっそく、それぞれを

【1】交渉術の概要
【2】仕掛けられたらどうするか?(対応策)
【3】日本人がこのテクニックを使うときのコツ
――の順番で紹介していきましょう。

・Good Guy/Bad guy Approach(いい人/悪い人役の交渉術)
【1】交渉術の概要
ひとりでなく、二人(もしくは複数)で交渉に当たるときに使うテクニックです。「いい人役」と「悪い人役」に役割を分担します。交渉相手に意図的に揺さぶりをかけ、交渉などを有利に進めようとするテクニックです。「悪い人役」が威圧的に畳み掛けて萎縮する相手に対して、一方的に攻めるのではなく、「いい人役」が相手に救いの手を差し伸べているように見えます。ところが、これらは演技で、すべてが計算されています。最終的に二人(もしくは複数)で硬軟取り混ぜて相手を取り込むのが目的です。

例えば、刑事もののドラマで、取調室の中、机をどんどん叩いたり、蹴飛ばしたりして黙秘する容疑者を厳しく問い詰める「悪い人役」の刑事と、「まぁまぁ」と「いい人役」の同僚の刑事がなだめて、カツ丼を容疑者にすすめて、容疑者がホロリときて心を開いて自供を始めるシーンがありますが、そのようなイメージですね。

【2】仕掛けられたらどうするか?(対応策)
欧米では古典的な交渉術ですが、日本人にはあまり馴染みがありません。基本的に、打ち合わせや交渉が始まると、序盤で「悪い人役」がいきなり威圧的な態度で畳み掛けてきます。そうしたら「仕掛け
られている」ことにすぐに気づけるようにしましょう。一番大事なポイントは、そこで相手に揺さぶられることなく、毅然とした態度を保ち、冷静さを失わず、こちらの要望を譲らないことです。

【3】日本人がこのテクニックを使うときのコツ
2人以上で仕掛ける交渉術なので、事前に入念な打ち合わせをするのが必要です。こういった「用意周到すぎる戦略」は、日本的なビジネス文化という印象が強いかもしれませんが、欧米でも使われます。日本人にとっては、最初は「いい人役」のほうがトライしやすいでしょう。

・Highball/Lowball Approach(高めのボール/低めのボールの交渉術)
【1】交渉術の概要
文字通り、「高めのボール」に対して相手が「低めのボール」を投げてくるという、古典的な交渉術の一つで、特に値段交渉の場で頻繁に使われます。売り手は、少しでも高く売りたいので高い価格を提示します。一方で、買い手は少しでも安く買いたいので低い値段を提示します。この相互のやり取りを「ボール」に例えているわけです。

現在の米政権がこの交渉術を多用しています。例えば米朝交渉です。従来、「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」という原則を強調していた米国は、核交渉を総括するポンペオ新国務長官が「永久的かつ検証可能で不可逆的な大量破壊兵器の廃棄(PVID)」に北朝鮮との交渉目標を上方修正しています。「永久的な大量破壊兵器の廃棄」とは、核施設と核弾頭だけでなく中長距離ミサイルや化学兵器など大量破壊兵器(WMD)の全面廃棄を意味します。

【2】仕掛けられたらどうするか?(対応策)
値段交渉のほかにも、昇進や入社の給与額を決める場合などでも見られる交渉テクニックです。通常、相手が売り手であればHighball、買い手であればLowballを投げてきます。そのように、高め、低めの値段設定で仕掛けられた場合には、当然のことながら、高めには極端な低め、低めには極端な高めを提示するのが通例です。そして、常に、落としどころ=walk-away price(立ち去る限度価格)を設定し、いざとなれば不利な契約をまとめるぐらいだったら決裂したほうがいい、というスタンスで、「腹を決めて」臨むという姿勢が大切です。

【3】日本人がこのテクニックを使うときのコツ
日本人は、ときに「最初は相手の要望を飲んで、赤字覚悟で値段を設定」という判断をすることもありますが、交渉ごとにおいては最初から手の内を見せ過ぎるというのも問題があります。欧米をはじめとして海外ではさらに極端に低い価格を提示してきて徹底的に値段交渉をします。「日本的な感覚で交渉に臨むと悲惨な結果を招きうる」と肝に銘じて、こちらが提示する値段を投げかけましょう。

いかがでしたでしょうか。
上記の代表的なテクニックのほかにも、BATNA、Snow Job、Chicken、Bogey、Nibbleという名称のテクニックが存在します。同書では具体的な交渉場面を例に、どのような英語を使ったら良いのかを
具体的な英会話とともにまとめています。みなさんは、外国人の巧みな交渉テクニックの術中にはまってしまった苦い経験はありませんでしょうか?

◆ソース◆
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『世界基準のビジネス英会話』(三修社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4384058918/ 
pp.8-9
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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