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今号のメルマガは、「ビジョン」「ミッション」「バリュー」についてです。書籍『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだグローバルリーダーの流儀』(ディスカヴァー)から紹介します。

みなさんが勤務する企業の「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれ何でしょうか。もしかすると、「ビション」「ミッション」「バリュー」の違いが分からない…という方もいらっしゃるかもしれません。実はメルマガ筆者も同書を読むまで、3者の明確な違いを認識していませんでした。簡単な英単語ですし、「何が違うのですか?」と聞くことも憚られたまま今日まで至っていました。また、そもそも「なぜそんなものが企業に必要なのか」という別の疑問についても今号のメルマガの後半で、同書から解説します。


◆「ビジョン」「ミッション」「バリュー」はそれぞれどのような位置関係にあるのか?

同書によると3者のステートメント(声明)の対象を以下の2軸で整理すると分かりやすいのだと記述しています。横軸:内的(企業自身について)か、外的(社会との関わりについて)か縦軸:願望なのか、義務なのか

「ビジョン」「ミッション」「バリュー」の位置づけを2軸で整理して2次元マトリックス図にすると以下のようになります。

       内的           外的
願望    ビジョン         ミッション
    (将来、ありたい姿)     (果たしたい使命)
義務    バリュー          事業
  (現在、実践すべき行動規範) (現在、実行すべきタスク)


◆そもそもなぜ「ビジョン」が必要なのか?

実際には「ビジョン」と「ミッション」を混ぜて表現している企業はたくさんあると同書は言います。本メルマガでは、この二つをひとまとめにして、「ビジョン」という言葉で表し、そもそもなぜ「ビジョン」が必要なのかについて同書から紹介します。

欧米は狩猟型社会、日本は農耕型社会とよく言われます。両社会の気質の違いがビジョンに関係するという説を同書では展開しています。両社会の気質の違いを順番に見てみましょう。

(1)狩猟型社会と「ビジョン」
狩猟型社会では、人々は獲物を獲るためにチームを作り、個々の役割を決め、獲物の群れを追いかけます。チームリーダーは季節や植生の状況などから獲物の群れの位置を推測し、チームが目指すべき「到達地点」と、そこで得られるであろう「獲物」の「種類」を決定します。この「到達地点」(内的)と「獲物」(外的)こそが「ビジョン」であり「ミッション」なわけです。

情報がどれだけそろっていても、リーダーがどれだけ優秀でも、未来を正確に予測することは不可能です。リーダーは得ることができる、限られたの情報から、強い意思を持って、どこへ行くかを「決定」しなければなりません。まさに「ビション」を作る作業です。狩猟型社会では、将来を見通し、行く先を決定できる人間がチームリーダーになります。

狩猟型社会では、チームリーダーが定めたビジョンが誤っていた場合、目的地にたどり着いても獲物がいないという事態が発生します。それは部族の飢え死にを意味します。また、メンバーがビジョンに従わないと、チームの人的資源を無駄遣いすることになり、食料不足を引き起こしかねません。組織が生き延びるために、メンバーが喜んで従う「良いビジョン」は不可欠です。

したがって、狩猟型社会においては、ビジョンが明文化されていないということは、地図もコンパスも持たずに草原をあてもなくさまようのと同じです。狩猟型社会のメンバーに対して「ビジョンなんていいから目の前の業務をこなせ」と言うのは、「いつか何かを見つけるかもしれないから、とにかく歩け」というのと同じことです。

ある程度の実績がある企業の場合は、過去の歴史や既存の事業が指針となる場合もあるかもしれませんが、ベンチャーやIT、バイオのように変化の激しい産業で、リーダーが「ビジョンなんてない」などと言っていたら、「この会社は危ない」と思われても仕方ありません。

(2)農耕型社会の「ビション」「ミッション」
一方、農耕型社会では、土地の規模や作物の種類から出来高はあらかじめ想定できます。例えば「加賀百万石」という具合ですね。天候が安定している限り、手順通り田を耕し、水を引き、田植えをし、水や肥料を正しく与えれば、だいたい予想通りの米100万石の収量が加賀藩では穫れていたわけです。「ビジョン」「ミッション」もあまり重要ではありません。

つまり、農耕型社会のチームリーダーに求められるのは、人員を的確に管理して作業を効率良く進め、問題があれば対処する、といった管理能力なわけです。

農耕型社会のメンバーに「ビジョンは?」と聞いても「毎日きちんと働くこと」とか「この畑で最大の収穫をあげること」といった答えが返ってくるのは当然と言えます。

米国の企業と比べて、日本企業は一般に、「ビジョン」を掲げることにあまり熱心ではないと同書では指摘しています。「ビジョン」という項目をホームページに掲げている会社でも、その中身は「世のため人のため…」「イノベーションを追い求める…」といった経営理念と混同していたり、特徴のない文章が並んでいると言います。間違ってはいなくても、どこの会社にでも当てはまる表現なので、会社の個性や目指す方向性の具体的なイメージは湧きません。ビジョンとは、会社が「こうありたい」と思っている姿です。その会社独自のビジネスやスタイルを盛り込むべきだというのが同書の主張です。

いかがでしたでしょうか。
同書の著者がソニーの人間に聞いた話として、ソニーは元々ハードウエアの会社なので、ウォークマンでもハンディカムでも、実際の機械を見てそのビジョンやスピリッツを伝えることができたと言います。しかし、ビジネスがハードウエアからソフトウエアやサービスの比重が重くなると、具体的なハードウエアを見せてビジョンを示すことが難しくなり、経営トップからのメッセージが伝わりにくくなるのだといいます。みなさんの企業ではビジョンが組織の末端まで浸透していますか?


◆ソース◆
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『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだ
グローバルリーダーの流儀』(ディスカヴァー)
https://www.amazon.co.jp/dp/4799314165/
pp.181-188
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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