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今号のメルマガは、日米のコミュニケーションスタイルの違いについてです。書籍『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだ グローバル・リーダーの流儀』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)から紹介します。

同書によると、日本人同士のコミュニケーションと、米国人同士のそれとは、言語でなく、そもそもスタイルが全く違うのだと言います。同書の著者である森本作也氏の経験上から以下の3つの軸
(1)メッセージが伝わる・伝わらないの責任の所在は話し手か聞き手か?
(2)表現のスタイルは直接か間接か?言語か非言語か?
(3)マインドセットはポジティブ志向かネガティブ志向か?
――で考えると理解しやすいのだと述べています。

それでは早速、それぞれの特徴を順番にみていきましょう。

(1)メッセージが伝わる・伝わらないの責任の所在は話し手か聞き手か?

日本人と米国人で違うのは、スピーチやプレゼンテーションの後の質疑応答です。日本では「質問は?」と聞いてもなかなか手が挙がりません。質問しない理由は「偉い人に直接質問するのは畏れ多い」「人前で的外れな質問をして『馬鹿な奴』と思われたくない」などいろいろ考えられますが、日本人にはかなり共通した気質です。

一方、米国では「質問は?」と聞かれると、待ってましたとばかりに手が挙がります。

両国の気質の違いは幼稚園児から大人まで共通しています。この違いはどうして生まれるのでしょうか。日本人のほうが理解力が高い?米国人のほうが人前で恥をかくことを畏れない?同書によるとどちらも不正解です。同書は「メッセージが伝わる・伝わらないの責任の所在は話し手か聞き手か?」にあると喝破します。

日本ではメッセージを伝える責任の所在が「聞き手」にあります。メッセージがきちんと伝わらないのは、聞き手の記憶力や理解力が低いからとみなされます。メッセージが分かりにくくても、聞き手は自分の能力の低さが露呈するような質問を避け、自分の頭で行間や表情を読み、話し手のこれまでの言動までも考慮して真意を理解しようと努めます。

米国ではメッセージを伝える責任の所在が「話し手」にあります。メッセージが伝わらないのは話が下手ということに帰結します。メッセージが分かりにくい場合は、徹底的に質問し、追及します。

(2)表現のスタイルは直接か間接か?言語か非言語か?

下の図のマトリックスは、ジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社が行った、日本人と米国人のコミュニケーションの分析を分かりやすく整理したものです。

        直接的、対立を厭わない
言語コミュニ       ↑      非言語コミュニ
ケーションに依存  ←     →   ケーションに依存  
             ↓
         間接的、対立を回避

横軸は言語コミュニケーションへの依存度です。左にいくほど、言語コミュニケーションへの依存度が高く、右にいくほど低い、つまり非言語コミュニケーションへの依存度が高い文化です。「メッセージを伝える責任の所在」とも関係が深く、言語コミュニケーションに依存する文化では、メッセージを伝える責任の所在は話し手にあり、非言語コミュニケーションに依存する文化では、その責任は聞き手にあります。

縦軸はコミュニケーションが直接的か間接的か、という比較です。上にいくほど、問題を解決するときにオープンで直接的に話すことを重要視し、下にいくほど、人間関係を重視して意見の対立を避け、間接的なコミュニケーションを選ぶ文化です。

この2軸で整理すると、日本人の文化は図の右下に位置し、「非言語に強く依存」し、「わりと間接的」です。文脈や人間関係を考慮し、さらに多少の比喩を織り交ぜて、あいまいな表現を使ってメッセージを伝えようとします。日本語では「一を聞いて十を知る」「阿吽の呼吸」「行間を読む」「空気を読む」などの表現にあるように、明確な言葉になっていないメッセージも重要です。

米国人は図の左上に位置し「聴者に推測の余地を与えない」程度に直接的ですが、「相手を傷つけることをありのままに言う」ほどではありません。

(3)マインドセットはポジティブ志向かネガティブ志向か?

シリコンバレー人は超ポジティブ志向で、ネガティブな雰囲気を病的に嫌がります。同書によると、重病人に「調子はどう?」と聞いても「元気です」と答えるということです。シリコンバレー人が全員、常にポジティブで楽観的なのかというと、そういうわけではありません。彼らも人間ですから、嫌なことも辛いこともあります。親しくなって個人的な話を聞くと、ポジティブな態度の合間に、さまざまな問題や悩み、不安が垣間見えることがあると言います。彼らの病的にポジティブな姿勢は「作られた」部分もあるようです。

しかし、ネガティブな言葉を口にすれば、それが自分を縛って後ろ向きな気持ちになって芳しくない結果を招き、さらに気持ちはよりネガティブになるという「負のスパイラル=負け犬への道」を彼らは恐れているのです。だから、やせ我慢をしてでも、それに耐えようとするし、チームではお互いに鼓舞しあってポジティブな雰囲気を作ろうとします。

いかがでしたでしょうか。
一筋縄に「外国人」とくくってしまうのは非常に危険です。本メルマガで紹介した日米だけでなく各国の文化の違いをPEGL[ペグル]のリーダーシップ力トレーニングコースの中でもCultural Intelligenceという科目内で学びます。講師は、(2)の中で触れているジャパン・インターカルチュラル・コンサルティングの創立者兼社長を務めるロッシェル・カップ氏で、違った文化の仕事相手―顧客、部下、上司、同僚、サプライヤー、提携先などと、より良いコミュニケーションと人間関係を形成するコツを(2)で紹介した図にポジショニングして学んでいきます。みなさんは普段、どのような態度で外国人に接していますか?


◆ソース◆
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『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだ 
グローバル・リーダーの流儀』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
https://www.amazon.co.jp/dp/4799314165/
pp.150‐170
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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