メルマガバックナンバーのコラムは、大前研一が自らが執筆・発行しているものではなく、

本講座の専属ライターにてお届けさせていただいております。

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今号のメルマガは、英国人のスモールトークの定番と言われる天候
についての話です。書籍『イングリッシュネス』(みすず書房)から
紹介します。同書の副題は「英国人の(隠された)ふるまいのルール」
です。翻訳書なのですが、邦題の「イングリッシュネス」というのは、
英国らしさ、英国文化の特性、英国人の言動の特徴、英国人の国民性
――を包括的に表す言葉として選ばれています。これはなんだか
気になりますね。

◆天候の挨拶で問いかけられたら、何らかの応答をすることが必要

以前には、少なくともある種の社交的な場面では、「ご機嫌いかが
ですか」(How do you do?)という挨拶がありました。しかし、その
質問をオウム返しにHow do you do?と答える挨拶は現在では多くの
人々に古めかしいとみなされ、もはや普遍的標準的挨拶としては
用いられていません。How do you do?は健康状態を本気で尋ねて
いるのではないのですが、天候の話も本気で話題にしているわけ
ではありません。

例えば「いいお天気ですね」「うわー、寒いですね」「まだ降って
いるんですか」などの問いかけは、儀礼的な挨拶であり、会話の
きっかけであり、沈黙の間を埋めるためのものです。

英国人が天候の話をするのは一種の「グルーミング・トーク」
(潤滑油の働きをする会話)で、類人猿に見られる「ソーシャル・
グルーミング」(たとえ、毛が完全に清潔であろうとも、相手との
絆を保つために、お互いに何時間も毛繕いし合う行為)に相当します。

同書によると、調査の結果、天候の話が決して年配の人々の間の古い
習慣というわけではありません。たとえば、18歳~24歳の年齢層から
は、人々が天候の話を頻繁に用いるのは、それが感じよく礼儀正しく
振舞うのに役立つからだという意識が最も顕著に浮かび上がっています。
若い年齢層は、「天候の話が相手の機嫌を探る手がかりになる」と
考えており、その点が、年配の人たちと比べて著しい特徴を示しています。

「いいお天気ですね」「うわー、寒いですね」「まだ降っているん
ですか」というような問いかけは、「お話したいのだけれど、構い
ませんか」とか、ある場合には単に「ハロー」という代わりに英国人
が使う決まり文句です。

天候の話にはルールが存在し、「ほんとうにね」とか、意味のない
儀礼的は返答をすれば良いのです。それは「ええ、私はあなたと
話します」「あなたに挨拶します」に相当する決まり文句です。
そのような応答をしないことは、小さなエチケット違反を犯し、
「いいえ、私はあなたと挨拶を交わすつもりはありません」という
やや無礼なメッセージを送ることになります。

天候についてのコメントが問いかけとして(あるいは疑問文のイント
ネーションで)発せられるのは、それが返答を必要としているからです。
とはいえ内容ではなく、応答すること自体が大事になります。口火を
切るためには天候についてのどのような質問的コメントでも良いし、
どのようなもごもごした賛同(あるいは受けるだけの「そうですね」)
でも返事として通用します。

天候を巡る会話は、成文化されていないけれど、暗黙のうちに了承
されているルールに則って行われる「様式的」なやりとりです。

◆天候の話が登場する場面

天候の話がふさわしい特定の場面が存在します。それは以下のような場面です。

・単なる挨拶として
・他の話題へとつなぐ準備として
・他の話題に関して会話が停滞し、気まずい不快な沈黙が生まれた時、
その場しのぎの、沈黙を埋める、あるいはそれに代わる話題として
・話者が個人的な内輪の話題を避けたがっているというシグナルとして
・不平を漏らす恰好な口実として
・ユーモアやウイットを発揮する機会として
・相手の機嫌を探る方法として
・ストイックな精神を示す機会として

英国人は挨拶としてまず天候の話をし、さらに会話の手始めに天候の
話を続け、それから間を置いてジョークや不満の種として、または
内輪の話を避けるために、時にはストイックな精神を示そうと、天候
の話をします。

◆天候の話には「同意」を表す応答をする

英国の天候は気まぐれで捉えがたいので、常に新たなコメントをし、
驚き、次の天候を推測し、嘆き、あるいはこれが最も重要な点なの
ですが、同意する内容に事欠きません。ここで天候の話に関する
重要なルール「いつも同意すること」というものが存在します。
天候の話では相手が誰であろうと決して反駁してはなりません。
応答では同意することがエチケット上、要求されています。同意を
示さないのは重大なエチケット違反です。

たとえば「うわ~、寒いですね」に対して「いや、結構暖かいですよ」
と答えるのは無作法です。合理的な回答ではなく、社交的な回答を
要求されます。コメントが明らかに間違っている時でさえ、常に同意
しなければなりません。

いかがでしたでしょうか。
実は、同書の原書は“米国人読者”に向けて書かれた書籍です。
(原書名はWatching the English)日本人は「欧米人」という一まとめ
に括りがちで、特に米国は英国の元植民地だったこともあり、親戚
関係のように考えてしまいますが、米国人からみると英国人は
「謎の生き物」だと言うことです。

第二次世界大戦後、日本人が接してきた英語文化はその大部分が
米国の文化なので、英国文化に対する認識が同書を読むと改まります。
みなさんは、米国人と英国人の国民性の違いはどういうところだと
思いますか?


◆ソース◆
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『イングリッシュネス』(みすず書房)
https://www.amazon.co.jp/dp/4622086603
pp.39-53
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