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今号のメルマガは、「病気になったときに、仕事を休んで医者にかかる」という意識には、外国人と日本人で大きな違いがあるという話です。ミャンマー人を一例にとり、病院に行きたがらないミャンマー人労働者についてのエピソードを、書籍『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』(合同フォレスト)から紹介します。

エピソードの主人公は、日本で就職したミャンマー人で、名前をトゥンとしましょう。ある日、トゥンは昼食後に激しい腹痛と嘔吐に見舞われます。トゥンが勤務する先の経営者も従業員も、季節的に
流行していた「ノロウイルス」を疑い、病院に行くように促しましたが、トゥンは頑なに受診を拒否しました。

トゥンの症状が治まった後も「もしも、ノロウイルスに感染しているのなら、ほかの従業員に感染が拡がるのを防ぎたい。診断書を出してもらい、継続治療が必要ならばするべきだ」と経営者は主張しましたが、トゥンは一向に首を縦に振りません。

問題の本質はトゥンの病院嫌いや頑固さにあったわけではありません。トゥンがなぜ頑なに受診を拒んだのか、みなさんは思い当たる理由があるでしょうか。その理由を私たちはミャンマー人とビジネスをするうえで、理解しておくべきだと同書の著者は言います。

トゥンが受診を拒んだ理由は、ずばり「医療費」です。医療設備が整った総合病院で受診すると、1回の診察でミャンマー人の平均月収の半分以上も請求されます。街中の一角にある小さなクリニックの診察代は安いのですが、処方された薬を服用して悪化することもあるということです。

トゥンは日本で生活する最低限のお金以外を、母国ミャンマーに住む家族に毎月仕送りしています。いくら医療費が健康保険から補助されているとはいえ、「既に症状が始まってしまった」のに医療費をかける日本人の金銭感覚がトゥンには理解できなかったのです。

それでは、ミャンマー人は病気の時にどうするのでしょうか。ミャンマーではよほど重症だと認識しない限り、自宅で治そうとする風潮があるのだと同書の著者は言います。その間、周囲の人がきちんと看病をします。世界中の国や人が、医療に恵まれているわけでも、経済的にゆとりがあるわけでもありません。はるばる日本まで出稼ぎに来ているミャンマー人の中には、「家族のために稼ぎたい」という強い気持ちを持った人が大勢いるのだと同書の著者は言います。「ちょっとした体調不良」で仕事を休んでいる暇はないのです。

ミャンマー人と仕事をするなら、「『病気になったら、仕事を休んで医者にかかる』という感覚が万国共通だと思わないほうが良い」というのが同書の著者の主張です。

いかがでしたでしょうか。
同書はミャンマー人に詳しい著者がミャンマー人と仕事するための相互理解するための解説書ですが、ミャンマー人に限らず「日本人の常識は世界の非常識」だらけなのでしょうね。みなさんは異文化
と接して、どのようなカルチャーショックを経験したことがありますか。


◆ソース◆
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『ミャンマーに学ぶ海外ビジネス40のルール』(合同フォレスト)
https://www.amazon.co.jp/dp/4772660631/
pp.22-27,54,55
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