shutterstock_334043390

今号のコラムは、米国ではトップの指示は絶対という話です。書籍『海外へ飛び出せ、異文化日本人!』(東京図書出版)から紹介します。

米国人は普段、お互いの名前を呼び合うとき、ボスや顧客に対してもニックネームやファーストネームで、とても気さくに友人のように接します。しかしながら、ボスが部下に対して判断や指示するときには、部下は軍隊式に直立不動の姿勢です。こうしたメリハリは極端です。

そういう点で日本人は、一応は先輩や上席を立てますが、形式的で表面的です。しかも、上司がピント外れな指示を出した場合には、なんと、その指示を無視してやり過ごしてしまいます。米国ではありえないことだと同書の著者は指摘します。

部下が上司の指示を無視した例として以下のような事例を同書では挙げています。
2011年3月、東日本大地震に伴う、東京電力の福島第一原子力発電所事故で、当時の同発電所の所長だった吉田昌郎氏が、本店から下りてきた「海水注入一時中断」という愚かな指示を毅然として無視し、海水注入を続行しました。同書によると吉田氏の行動に対する元内閣安全保障の室長だった佐々淳行氏のコメントに同書の著者は驚いたと言います。「福島原発の所長判断を支持したい。私も警察時代には現場を見ていない上層部から下りてくる命令を何度も握りつぶした経験がある。(上層部からの命令に)従うとさらに大変な事態になる」と述べています。

これは、米国人だけでなく外国人全般が到底理解不能な上下関係だと言います。米国的には判断力も人望もパワーも誰よりも優れている人物、本来なら吉田所長のような人がCEOになるべきだという考え方です。しかしながら、日本では大臣も学者も含めて、すべてエリート仲間の中での序列待ちです。ですから、事故のようないざというときにトップが笛を吹けど踊らずということになります。

これは駄目なトップでも波風を立てずに年功序列を保つ日本人特有の知恵です。被災地に来た首相に住民が大声で文句を言っているシーンを見て、中国人たちが「自国なら銃殺」だと驚くと言います。日本人ではまったく驚くに値しません。

いかがでしたでしょうか。
米国のトップであるトランプ氏は数々の疑惑や失言に動じることなく大統領の椅子に座り続けています。有能と言われる閣僚を何人も辞めさせても「任命責任」を問われるのを聞いたことがありません。なかなかピンとは来にくいのですが、存在も指示も絶対的なものなのだろうと想像します。

みなさんは、「米国ではトップの指示は絶対」と実感したことはありますか。

◆ソース◆
============================================
『海外へ飛び出せ、異文化日本人!』(東京図書出版)
https://www.amazon.co.jp/dp/486223593X
pp.155-157
============================================


【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
8db277b8-e9bf-4e62-9a9d-7ae9a78d0136