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今号のコラムは、人種や男女の差別的表現についてです。日本の中にいると、「人種」「ダイバーシティ」といった問題が遠く感じる方も多いかもしれません。しかしながら、グローバルでは非常にセンシティブな話題になりがちです。今回は「米国とフランスの違い」に焦点を当てて、書籍『英語を学べばバカになる~グローバル思考という妄想~』(光文社新書)から紹介します。みなさんも、黒人は「black」「Negro」と呼ばずに「African-American」と呼ぶのがベター、インディアンも「Native American」と呼びましょうと教わったことがあると思います。同書の著者で帝塚山学院大学教授の薬師院仁志氏によると、肌の色や人種の身体的特徴は表に出すことをタブー視し、政治的正しさ「PC=Political Correctness」を求めるのは、米国的な発想で米国社会の特殊な事情の裏返しなのだと主張します。人種的差別表現や男女差別表現について、同書では米国とフランスを以下のように比較しています。

◆人種的差別的表現

フランスで売っているアジア料理用食材などによく描かれているイラストがあり、割り箸のように痩せていて、細い線1本の目が吊り上がった女性が描かれています。それが、フランス人から見た典型的な東洋人の身体イメージです。米国ではこれは一種の偏見と言われるかもしれませんが、フランスでは全く問題にならないと言います。むしろそれはアジア人女性の一種の魅力的なイメージとのことです。だからこそ、食品会社は、自社の商品にそうしたイラストを用います。

人種の呼び方に関しても、フランス語では「黒い人」は現に黒いのだから、「黒人」といいます。単に黒人と言えば済むものをいちいち「アフリカ系フランス人」などというフランス人はいないのだと述べています。2003年度のミス・フランスは黒人でしたが、誰も彼女を「黒人」だと呼ぶことをためらわなかったと言います。

フランスの知識人たちは、「語彙浄化=言葉狩り」に首をかしげているようです。また、フランスの庶民と言えば、「語彙浄化」という概念すら知りもしないとのことです。そんなことは全く気にしないのが普通です。

◆男女差別的表現

女性に対する敬称でも同様です。米国では既婚と未婚で女性を区別するのが差別的だということで、Miss.やMrs.を使わず女性には誰でもMs.なる敬称をつけますが、フランスでは相変わらず「マダム」や「マドモアゼル」を用いています。はじめて出会った女性に対して「マダムですか、それともマドモアゼルですか」と質問することも特に失礼ではありません。男性が聞く場合は何だか下心ある質問のようにも受け取られることもあるので、「マドモアゼル、あるいはマダムでいらっしゃいますか」などと、少し婉曲に質問することは多いようですが、それでも質問すること自体は何ら問題がありません。

いかがでしたでしょうか。
人種や男女の差別的表現をタブー視しているのは、米国社会の特殊事情に裏返しであるという同書の著者の見解をみなさんはどのように受け止めるでしょうか。同書は15年前に出版されたものになりますが、その後も時代背景と主に変化を遂げた言葉も沢山あるのではないかと推測します。同書の著者はおもに米国とフランスを比較していますが、みなさんは海外で、人種や男女の差別的表現に関して「一般的に言われていることと違うな」と感じた経験はありますか。

◆ソース◆
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英語を学べばバカになる~グローバル思考という妄想~ (光文社新書) 
https://www.amazon.co.jp/dp/B00KS3FF36
第2章英語支配の虚像
日本人の勘違い――その一 「黒人」は差別語か
日本人の勘違い――その三 英語世界だけの「政治的正しさ」
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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