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今号のコラムは、ディベートにも用いられる、議論するための“型”「トゥールミン・モデル」(Toulminは同モデルを提唱した、英国の分析哲学者の名前)についてです。同モデルの重要な部分に絞って書籍『グローバル・マインド』から紹介します。

◆トゥールミン・モデルは、3つのピースで構成
トゥールミン・モデルは3つのピースで構成されます。「結論」(Claim)とそれを支える「根拠(Warrant)」と「証拠(Fact)」です。

例えば、「ビジネスパーソンの朝食として、バナナとリンゴのどちらのほうがふさわしいか」という議論のお題に対して、「バナナですね。なぜなら、バナナで糖分を一気に摂取できるからです」という主張があるとします。

このときの「バナナですね」は結論、「バナナで糖分を一気に摂取できるからです」が証拠となります。トゥールミン・モデルにあてはめて、この主張を図式に表してみると、この文章には上で挙げた3つあるピースの中の1つ「根拠」が欠落していることがわかります。

◆【未完成のトゥールミンモデル】
Claim(結論) = Warrant(根拠) + Fact(証拠)
バナナですね = (  )+ 一気に糖分を摂取できるのはバナナ

では、欠落してしまっていて補うべきピースであるところの「根拠」とは何でしょうか。それは、この文章にはなぜ「ビジネスパーソンにとってふさわしい朝食」が「一気に糖分を摂取できる」ことであるのか、その説明が抜け落ちているのです。そもそも「朝から、一気に糖分を摂取」しなければならない理由を理解できない議論参加者がいるかもしれません。

議論参加者が日本人であれば、「ビジネスパーソンは忙しい。朝からガッツリ働くわけで、短時間で一気に糖分をチャージできたほうが良いということだろうな」と想像を膨らませることで行間を補うことができるかもしれません。しかし、当たり前のこととして言語化していなかったこの部分こそ、多様な考え方が存在するグローバルな場では、「根拠」として説明が必要というわけです。

◆【完成形のトゥールミンモデル】
Claim(結論) = Warrant(根拠) + Fact(証拠)
バナナですね ¬=(忙しくて活動量が多いので、)短時間にエネルギーチャージできる食べ物が理想 + 一気に糖分を摂取できるのはバナナ

同書によると私たち日本人が苦手なのが、この「根拠を明確に押し出す」部分です。ハイコンテクスト文化(高文脈社会)の中の察し合うコミュニケーションでは、根拠のくだりを飛ばしても通じてしまうからです。しかし、それは、ローカルでしか通じません。相手から見れば、一気に糖分を摂取できるバナナという意見は突拍子もないものかもしれません。グローバルでは「言わずとも共有できる前提」などが存在しないからこそ、結論を導き出した証拠だけでなく、根拠もきちんとテーブルの上に並べなければなりません。特に重要な局面では、自分の意見が根拠も含めてきちんと相手に伝わっているかどうか、ホワイトボードを活用して可視化することも有用です。

いかがでしたでしょうか。
メルマガ読者の方の中には、グローバルな場における議論の中でいかに英語での「説明する力」が大切か、痛感している方も多いかも知れません。トゥールミン・モデルでいうところの「根拠」を説明するのを省いてしまったばっかりに、相手との議論がかみ合わなかった経験のある方は、その時、どのような方法で切り抜けていますか。

◆ソース◆
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『グローバル・モード』(ダイヤモンド社)
https://www.amazon.co.jp/dp/4478108897
pp.166-167
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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