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今号のコラムは、意思決定の仕組みは国によって異なるという話です。書籍『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだグローバルリーダーの流儀』(ディスカヴァー)から紹介します。

同書が紹介しているジャパン・インターカルチュラル・コンサルティング社の調査結果によると、意思決定の仕組みの違いは2つの軸で整理できます(下の【図】参照)。ヨコ軸は意思決定がトップダウン型か、コンセンサス型か、タテ軸は社会が平等社会か階層社会か。つまり、社会がそもそも平等志向で、誰もが同じように扱われるべきと考えられているか、それとも階層志向で、地位や年齢によって扱われ方に違いがあって当然と思われているかということを示しています。

【図】意思決定の仕組みの違いを2つの軸で整理

      タテ社会
    (1)↑(4)
トップダウン← →コンセンサス
    (3)↓(2)
      平等社会

(1)左上のゾーンに集まる国は、トップダウンのタテ社会なので、意思決定のメカニズムとして理解するには分かりやすい構造です。強権を持つ上位の人が決定し、下の人は文句を言わないというものですね。欠点があるとすると、リーダーが優秀であればこのシステムはうまく機能しますが、能力が不足していたり人格に問題があると、目的が達成されなかったり、独裁者が生まれたりするリスクを内包するところです。左上のゾーンにあてはまる国として、同書では、ロシア、東南アジア、韓国、ラテンアメリカ、中国などをあげています。

(2)右下のゾーンはコンセンサスを重要視する平等な社会です。組織に、メンバー間の強い信頼感と自由に意見を言える環境があり、組織のメリットと自分のメリットがきちんと整合すれば、このシステムも機能するということです。コンセンサスに至るには時間がかかるかもしれませんが、議論を尽くしたうえで、最終的には多数決で決まります。右下のゾーンにあてはまる国として、同書では、オランダとスウェーデンをあげています。

(3)左下のゾーンは平等かつトップダウンというユニークな位置付けです。意見を出し合って議論はするけれど、最終的にはリーダーが決定します。多角的に意見や質問を吸い上げることで、的外れな決定を行うリスクを下げつつ、最終的には執行責任を持ったリーダーが決定するので、ずるずると決定が遅れるというリスクも下げるという、いわば「いいとこ取り」のシステムです。組織上の効率は良いのですが、決定が間違っていた際には、リーダーがその責任を一手に負わなければなりません。成功すれば、リーダーが尊敬と称賛を集めます。左下のゾーンにあてはまる国として、同書では、米国をあげています。

(4)右上のゾーンはタテ社会でありながら、コンセンサス志向というユニークな位置づけです。これは有力な一部メンバーのコンセンサスによって決定がなされるということです。リーダーはある程度高い位置に置かれ尊重されますが、組織の創設者やカリスマリーダーではない限り、それほど強い決定権は与えられていません。常に有力メンバーの意見を伺い、空気を読んで、納得が得られる決定をしなければなりません。つまり有力メンバーの政治力が決定に大きく影響するわけです。そして決定は「誰かの承認が得られたら」ではなく、「誰も反対しなかったら」行われます。ですから、プロジェクトのGOサインが欲しい人は、有力メンバーにさまざまな「根回し」をして賛同を得ておく必要があります。こういう仕組みだと、なかなか決定が行われず、行動が遅れる状況に対して、「幹部の意見がまとまらなかった」と言い逃れることができます。また、もし決定が間違っていたということになっても、その状況に対して、「幹部の総意が間違っていた」と言えるので、いずれにしても個人で責任を負う必要はありません。右上のゾーンにあてはまる国として、同書では日本をあげています。

いかがでしたでしょうか。
今回ご紹介したテーマは、PEGL[ペグル]のリーダーシップ力トレーニングコースに含まれるCultural Intelligenceという科目の中でも詳しく取り扱っています(◆ソース◆参照)。
上で説明した意思決定の仕組みの違いにより、海外企業が日本企業の幹部とあの手この手を使ってやっと接触し、会議では良い感触を得たのに、後日その幹部から「社内で検討した結果、御社の提案は受けられないことになった」と海外企業は返事をもらい「幹部は当然決定権を持つはずの立場なのに、どうして決められないのか」と愛想を尽かすことがあるようです。みなさんの組織の意思決定の仕組みは、どのようなプロセスを経て実行されていますか。

◆ソース◆
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『SONYとマッキンゼーとDeNAとシリコンバレーで学んだグローバルリーダーの流儀』(
ディスカヴァー)
https://www.amazon.co.jp/dp/4799314165/
pp.107-111

リーダーシップ力トレーニングコース
https://pegl.ohmae.ac.jp/course/leadership/
Cultural Intelligence/講師:Rochelle Kopp
https://pegl.ohmae.ac.jp/lecture/cultural_intelligence/
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【記事提供元】実践ビジネス英語講座-PEGL[ペグル]-
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